2013年8月31日土曜日

税理士有志が消費税増税中止をアピール

 消費税の増税に反対する税理士が29日、税の専門家として日本経済を低迷させる増税の中止を求めるアピールを発表しました。

 アピールは、
消費税は所得の低い人には負担が重く、所得の多い人には負担が軽いという不公平な税制であり、働く者の大部分の給与は引下げられ、中小企業の収益が悪化しているなかでの消費税率の引上げは、国民生活や中小企業の営業を破壊することになる。
・輸出については免税(消費税率0%)とされ、「仕入に含まれる」とされる消費税相当額が還付されるという不公平がある。
・消費税の導入以降、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられ、消費税収は増えたものの国の税収全体は減っている。(⇒大企業への行き過ぎた減税や富裕層への優遇税制を見直す必要がある)
と述べて、消費税増税の実施は中止すべきとしています。

 ひところは「消費税は完全に平等な税率だから」などと口にするTVコメンテータがいましたが、逆進性が周知されてからはさすがにそんなことをいう人はいなくなりました。

 消費税は、突如「直間比率」という新しい概念が導入されて、1988年・竹下政権時代に強引に導入されました。しかしながらそれ以降は消費税率がアップする度に、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられたため、庶民の負担は増える一方であったのに対して、税収の方は相殺されて却って減りました。
 政府と財務省は法人税率が高いと国内企業が海外に逃避するということを理由にして税率を下げてきました。しかし実際に逃避するような企業はなかったし、近年はそれとは全く別の理由で海外に転出する国内企業が増えています。国内企業が逃避するから、というのはまやかしの理由でした。

 そして消費税の導入を機に、それまでは健全であった日本の国家財政は不健全な方向へと向かい始めました。
 その都度国家財政を立て直すためにと庶民に負担を要求する一方で、富裕層と企業の税負担はその分軽減してきたので、当然の成り行きといえます。その結果、大企業の内部留保は実に280兆円に達しました。

 今回もまた消費税の増税を前提にして、法人税率の軽減が論議されています。
 来年もしも消費税アップが実現するようなことがあれば、たちまち大不況が到来し、中小企業や商店が倒産することが予想されます。

 以下にしんぶん赤旗の記事と税理士有志のアピール(案)を紹介します。
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税理士137人が「アピール」 消費税増税中止求める
しんぶん赤旗 2013年8月30日
 安倍政権が4月に強行しようとしている消費税の増税に反対する税理士が29日、衆院第2議員会館で記者会見を開き、税の専門家として日本経済を低迷させる増税の中止を求めるアピールを発表しました。北海道から沖縄まで全国36人の税理士が呼びかけ、29日現在で137人が賛同しています。

 アピールは、大企業や高額所得者の所得が増えている一方で、働く者の賃金は引き下げられ、中小企業の収益は悪化していると指摘。所得の低い人に負担が重い不公平な税制である消費税の増税は、国民生活や中小企業の営業を破壊すると指摘しています。
 また、大企業へのゆきすぎた減税や富裕層への優遇税制を見なおすことの必要性を指摘。国民の暮らしと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やすことも税収増をはかるためには重要と強調しています。「格差が広がり、経済が低迷している今日、消費税の増税実施は中止すべきです」と訴えています。

 会見では、税理士の浦野広明、湖東京至、佐伯正隆、永沢晃、平石共子、青木輝光の各氏が、増税中止への思いを語りました。
 浦野氏は「国政の指針は日本国憲法です。税金は憲法にもとづき、負担能力に応じた取り方であるべきです」と語りました。湖東氏は「多くの中小企業は、消費税を滞納すると融資が受けられないので、給料や経費を削って必死に納めています。消費税が8%や10%になったら、これらの事業者の大半は事業を続けられなくなります」とのべました。


消費税増税の中止を求める税理士のアピール(案)

税理士の皆さん、国民の皆さんへ
 私たちは税に関する専門家として、来年4月、再来年10月からの消費税率の8%・10%への増税は中止すべきであるとの思いからこのアピールを発表しました。

消費税は不公平な税制です
 政府も「消費税率の引上げに伴う低所得者対策の検討」に言及せざるを得ないように消費税は所得の低い人には負担が重く、所得の多い人には負担が軽いという不公平な税金です。大企業や高額所得者の所得が増えている一方、働く者の給与は引下げられ、中小企業の収益が悪化しているなかでの消費税率の引上げは国民生活や中小企業の営業を破壊することになります。
 消費税法の仕組みでは「消費税の納税義務者は事業者」とされ税務署に納税するのは事業者であり、また、「売上等には消費税が含まれる」ことから消費税相当額を売上高のなかに転嫁できるかどうかは個々の事業者の努力いかんとなります。 
 力の弱い事業者ほど消費税の転嫁ができず身銭を切って消費税を納めざるを得ないことになり、税率の引上げはこれら事業者の死活問題となります。
 さらに、輸出については免税(消費税率0%)とされ、非課税とは異なり「仕入に含まれる」とされる消費税相当額が還付されるという不公平も拡大することになります。

能力に応じた税負担が必要です
 「国の財政が大変だから」「社会保障のためなら増税も仕方ない」というご意見もありますが、税の集め方や使い方を変える必要があるのではないでしょうか。
 消費税の導入以降、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられ、消費税収は増えたものの国の税収全体は減ってきました。消費税率を3%から5%に引上げた際には、回復しかかった経済が失速し、国全体の税収は14兆円も減少しました。
 大企業への行き過ぎた減税や富裕層への優遇税制を見直すことが必要です。国民の暮しと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やすことも税収を増やすためには重要なことです。さらに、税の使い道を変え、ムダな支出を削減し、国民生活の向上、社会福祉の充実などに効果的に支出することで経済・財政も活性化してきます。

今回の増税実施は中止すべきです
 消費税に関しては様々なご意見がありますが、格差が広がり、経済が低迷している今日、消費税の増税実施は中止すべきです。