2013年7月11日木曜日

婚外子差別は違憲 最高裁が秋にも判断

 
 婚外子結婚していない男女間の子ども)の遺産相続分を、嫡出子(結婚している夫婦の子ども)の半分としている民法の規定について最高裁がこの秋に「違憲」であるとの判断を下すものとみられています。
 10日、2件の婚外子の遺産相続についての特別抗告審が最高裁大法廷で行われました。大法廷は憲法判断や判例変更をする場合に開かれます。

 欧州では婚外子嫡出子間の差別は既に撤廃されていて、先進国では日本だけが差別をしていました。これまで国連の人権機関も日本に対して再三にわたり是正勧告してきましたが改善されず、国会もかつてのハンセン病患者差別と同様にこの問題を放置してきました。

 秋に「婚外子の差別は不当」の判決が出れば、「非嫡出子は法的に差別を受けず嫡出子と同様の権利を持つ」(ベアテ草案第19条)と書いたものの、「民法で定めるべきこと」としてGHQ内の運営委員会で却下されたベアテ・シロタ・ゴードンさんの憲法草案の精神が、実に67年ぶりに日の目を見ることになります
      2012年7月16日「【憲法制定のころ 4】 ベアテ ・ シロタ ・ ゴードン 」

 ウォールストリートジャーナルの記事と朝日新聞の社説を紹介します。
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婚外子側、格差是正求める=相続規定「根拠なく違憲」
 最高裁大法廷弁論
ウォールストリートジャーナル 2013年7月10日
 結婚していない男女の間に生まれた「非嫡出子」(婚外子)の遺産相続分を嫡出子の半分とした民法の規定が憲法に違反するかが争われた2件の家事審判のうち、東京都の男性の遺産分割をめぐる特別抗告審弁論が10日午前、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)で開かれた。

 非嫡出子側は「相続格差に合理的な根拠はなく、規定は法の下の平等を定めた憲法に違反し無効」と主張。非嫡出子として生まれた男性は「引っ込み思案にならざるを得ない場面もあった。出生に関して何の責任もない子を差別することで(法律婚の尊重という)立法目的をどれだけ果たせるのか疑問だ」と意見を述べた。
 午後には、和歌山県の男性の遺産分割について弁論が行われる。いずれもこの日で弁論が終結し、今秋にも決定が出される見通しで、最高裁が違憲判断を示すかが注目される。
 2件の審判は、一、二審とも規定を合憲と判断し、非嫡出子側が特別抗告していた。

 弁論で非嫡出子側は「家族や結婚に関する価値観の変化や、(日本が批准した)児童の権利に関する条約で出生による差別が禁止されていることなどを考慮すれば、規定の存在意義は失われた」と指摘。立法による救済が進んでいない現状に触れ、「法改正を待つことは許されず、直ちに司法救済が図られるべきだ」とした。(時事通信)

社説 婚外子差別―是正の機会を逃すな 
朝日新聞 2013年7月11日
 生まれついた巡り合わせによる差別をこれ以上、放っておいてはいけない。 
 結婚していない男女間の子の相続分を、結婚した夫婦の子の半分にする民法の規定は憲法にかなうのか。最高裁がきのう、大法廷で弁論を開いた。 
 違憲の判断や、判例を変えるときは大法廷でしかできない。最高裁はこの規定について、18年前に合憲とする決定を出したが、今回はその判断を改める可能性が大きくなっている。 
 理不尽な差別をただす機会を逃してはならない。 
 この規定は「家」制度をとる明治時代の旧民法から引き継がれた。法律婚の尊重と婚外子の保護のバランスを図ったものだと説明されてきた。 
 しかし、出自は本人の意思や努力で変えられず、それを理由に差別するのは筋違いだ。家族のあり方や価値観が多様になった現代社会には通用しない。 
 問題は、経済的な相続だけにとどまらない。婚外子が婚内子より社会の立場上、劣っているかのような差別の土壌をつくってきた面もある。 
 相続はこの規定通りにしなくてはならないわけではなく、実際には家族ごとの意思で配分されている。だとしても、法律が当事者の判断に先んじて子どもを区別する必要はない。 
 同様の規定をもっていたドイツやフランスなども法改正しており、先進国では日本だけが残った。国連の人権機関は、国際基準に反するとして政府に繰り返し勧告してきた。 
 改めて問われるのは、問題を放置してきた国会の怠慢だ。 
 法務省は96年、相続差別をなくす民法改正の要綱案をまとめた。だが一部国会議員が「男女の婚外関係を促すことになる」などと反対した。法案提出もされず棚上げされてきた。 
 95年の最高裁の合憲判断には15人の裁判官のうち10人が賛成した。だが、その10人のうち4人は補足意見で、立法による解決への期待を述べた。その後の判断でも、小法廷が補足意見で法改正を促してきた。 
 国会のだらしなさは、一票の格差をめぐる問題でも見飽きた光景だ。裁判所に違憲と言われないと動けない、言われても動きが鈍い。そんな国会では、正義を実現できる代表機関とは言いがたい。 
 最高裁が法令を違憲としたのは戦後8件しかない。だが、少数者である婚外子の声は小さくとも、法の下の平等という重い価値が問われている。 
 もはや司法による救済しかないのではないか。