2013年6月18日火曜日

維新失速で首相は民主の改憲勢力の取り込みへ

 安倍首相はG8への同行記者団との懇談で、7月の参院選について、「自公で『3分の2』ということは全く目指していない参院選後民主党の一部も含めた改憲勢力の結集を図りたい」と述べました。
 維新の会が失速して、「自維み」だけでは改憲発議に必要な議席の確保が難しくなったためで、もともと民主党には改憲を明言しているメンバーが沢山いるので、そうした勢力を糾合しようという作戦に現実性はあります。
 
 96条の先行改定についても、これまでの主張をトーンダウンして公明党への配慮を見せました。
 さらに秋の臨時国会では国民投票法改正案の成立よりも成長戦略に集中するとして、参院選に向けての国民へのアピールも忘れませんでした。 
 こうした硬軟両用の使い分けは、何としても改憲を実現しようという首相の執念と深謀の現れと見るべきでしょう。

 ところで「第3の矢」として5日に発表された経済成長戦略があまりにもお粗末であったために結局は株価の暴落につながりました。当初は、①限定正社員制度の導入(解雇規制の緩和)、②株式会社による農地の自由所有制度の導入③法人税率の引き下げ を柱に考えていましたが、それらは大企業本位の政策であって到底国民や農民の支持が得られないと判断されたために、参院選前に発表するのは不得策として取りやめたということです。
 もしもそうした経済政策が参院選後に改めて国会に提出されるということになれば、とても許されない「国民だまし」の手口ということになります。

 以下に産経新聞の記事を紹介します。
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安倍首相 民主の改憲勢力取り込みへ、「維新失速」背景か
産経新聞 2013617
 安倍晋三首相がポーランドでの同行記者団との懇談で、7月の参院選後の結集を目指す「改憲勢力」に民主党議員の一部を含める考えを初めて示した。背景には日本維新の会の失速により、参院(定数242)でみんなの党を合わせた「自維み」で発議に必要な162議席の確保が微妙になったことがある。一方で首相は、秋の臨時国会で改憲に必要な「3つの宿題」解決のための国民投票法改正案の成立よりも成長戦略に集中すると強調。参院選に向け、経済政策に最重点を置く決意も示した。
 「そもそも1回の参院選で自民、公明両党で『3分の2』ということは全く目指していない。選挙の勝敗とは全く関係ない話だ」
 首相は懇談でこう述べ、選挙結果に関わりなく、民主党内で改憲に積極的な保守系議員の協力も含めて憲法改正の国会発議に必要な3分の2以上の勢力確保に強い意欲を見せた。
 今年5月1日、首相はサウジアラビアでの同行記者団との懇談で参院選後に自民、維新、みんななどの改憲勢力で「3分の2」の確保を目指すとしていた。しかし、同月13日、維新共同代表の橋下徹大阪市長の慰安婦発言で同党は急激に支持を失っている。
 首相が民主党の一部との連携に触れたのは、長島昭久、渡辺周両元防衛副大臣らの「改憲派」に秋波を送り、同党にくさびを打ち込む狙いもありそうだ。ただ、同党の海江田万里代表は17日の記者会見で「政党の中のことをあれこれ言うのはフェアでない。放っておいてほしい」と強い不快感を表明した。
 民主党改憲派との連携で公明党との連立に影響が出る可能性があるが、首相は憲法96条改正による発議要件の過半数への緩和について「平和主義や基本的人権、国民主権に関わるものは3分の2のまま据え置くべきだとの議論もある。そうしたことも含めて議論する」と述べた。公明党幹部はこれを「配慮してくれている」と評価した。
 菅義偉官房長官も17日の記者会見で「自公連立の上に立って政策ごとに連携するのが基本的な考え方だ」と語り、民主党の一部との連携は部分連合にとどまると強調。その上で「今、国民にとって大事なことは日本経済の再生だ。経済を成長軌道に乗せることが極めて大事だ」と述べ、政策の優先順位について首相と歩調を合わせた。(加納宏幸、ワルシャワ 赤地真志帆)