2013年5月7日火曜日

憲法を粘土細工のようにいじっていいのかと

 
 7日付の(韓国)中央日報に安倍首相の憲法観をたしなめる記事が掲載されました。

 「マッカーサーが強要した憲法、そのために軍隊も持てない国。正常でないので早く改正し、主権を回復しなければならない」という安倍首相の考えは間違いで、右翼が作った“憲法神話”。
 マッカーサーは日本に平和憲法を強要したのではなく、新しい憲法を日本政府に任せたが、日本は「大日本帝国憲法」をホンの少しだけ変えたものしか作れなかった。それでやむなく鈴木安蔵らの憲法研究会が作った憲法をベースにしてGHQが9日間で憲法草案をまとめ、それを国会で3ケ月かけて審議して決めたものだ。

 記事は、以上が真実でそれらはすべて日本の衆議院国会図書館のホームページに出ているとしたうえで、安倍首相が憲法99条閣僚の憲法尊重と擁護義務に反して改憲規定の96条に手をつけようとしているのは、憲法に対する重大な挑発だと述べています。

 もともと安倍首相の話は一向に論理的でないことが多いのですが、ここまであからさまに外国紙からも批判されるとは情けない話です。
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【時視各角】 安倍には憲法が粘土なのか
(韓国)中央日報 2013年05月07日
  マッカーサーが強要した憲法、そのために軍隊も持てない国。正常でないので早く改正し、主権を回復しなければならない。日本右翼の改憲論の根底にある認識だ。平凡な日本人の中にもそう考える人たちが多い。 

  果たしてこれは正しいのか。マッカーサーは本当に日本に平和憲法を強要したのか。連合国総司令部(GHQ)は軍靴で踏みつけて強制施行したのか。結論からいうと、これはすべて嘘だ。右翼が作って広めた“憲法神話”だ。 

  まず戦犯国の日本は降伏した以上、軍国主義の明治憲法を廃棄するしかなかった。軍国主義の排除、民主主義の導入を規定したポツダム宣言に基づき、新しい憲法を作らなければならなかった。当初マッカーサーはこれを日本政府に任せた。これを受け、1945年10月、松本烝治国務相が主導し、憲法草案を作り始めた。ところが松本は天皇主権制など明治憲法の骨格をそのまま守ろうとした。GHQとは何の相談もなしにだ。これが毎日新聞の特ダネ報道で暴露された。これを見たマッカーサーはこのままではいけないと考え、GHQに憲法の草案作成を指示した。 

  この時、GHQ新憲法の草案を作ったのが、進歩知識人からなる憲法研究会だった。主導者は在野法学者の鈴木安蔵と高野岩三郎だった。GHQは彼らのおかげで9日後に平和憲法をマッカーサーに報告することができた。彼らの草案が現行の平和憲法の骨格になったのだ。 

  彼らの活躍像は07年、大沢豊監督の「日本の青空」という映画にもなった。平和と人権を追求する日本の知識人の手で平和憲法が胎動する過程を生き生きと描いた。 

  平和憲法がGHQによって強制施行されたというのも事実でない。GHQが戒厳軍のように銃剣を振り回しながら無理に通過させたのではない。帝国議会の貴族院と衆議院の審議と表決をすべて通した。その過程でいくつか修正された。もともと単院制にしようとしていた国会が現在の両院制に変わったりもした。また議員が軍隊保有禁止に反対すると、憲法改正小委の芦田均委員長がもみ消したりもした。 
  3カ月にわたる論議の末、1946年10月7日、平和憲法は衆議院を通過する。その日の本会議で吉田茂首相はこのように所感を語った。「衆議院と貴族院の熱情的で慎重な審議を経て、適切な修正を加え、新日本建設の礎となる憲法改正案が確定し…」。吉田首相が1分ほど発言する間、3度も拍手が起こった。GHQが強制した憲法なら、そうであっただろうか。これは秘史でも野史でもない。日本の衆議院、国会図書館のホームページにすべて出てくる内容だ。 

  それでも日本の右翼は集団で記憶喪失にでもなったのか。なぜ強要された憲法だと言い張るのか。この主張は最近の安倍晋三首相の“ハリウッドアクション”につながっている。彼は軍隊保有と交戦権を否認した9条を破棄しようと、まずは改憲規定の96条に手をつけようとしているようだ。衆参両院の各3分の2以上の同意となっている改憲ラインをそれぞれ2分の1に引き下げようという考えだ。 

  これは憲法に対する重大な挑発だ。文明国家は国家権力の暴走で国民の基本権が侵害されないよう、憲法改正要件を一般法律より難しくしている。これが硬性憲法の趣旨だ。改憲ラインを低めようと改憲するというのは、これを完全に無視する行為だ。国民を軽視しているということだ。憲法が道路交通法、食品衛生法と同じレベルなのか。憲法がゴム粘土のように扱われてもよいのか。日本にも憲法学者という名刺を作って持ち歩く人たちがいるのなら、とうてい黙過できないだろう。さらに平和憲法99条は、閣僚の憲法尊重と擁護義務を明示しているのではないのか。 

  安倍は引退すれば映画監督になり、ヤクザ映画を撮りたいと話したことがある。低質の映画はいい加減にして「日本の青空」から見ることを望む。理解するほどの水準であればのことだが。     ナム・ユンホ論説委員