2013年5月17日金曜日

16日、衆院憲法審査会が開かれました

 
 衆院憲法審査会は16日、憲法の「前文」、第10章「最高法規」、第11章「補則」について討議しました。

 自民党の保岡興治氏は、前文の「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」するとの規定をユートピア的発想による自衛権の放棄にほかならず問題だ」と指摘し、全面的な見直しを唱えました。
 日本維新の会の伊東信久氏も「国家の自立を目指す趣旨に基本骨格を改めるべきだ」と強調し、みんなの党の小池政就氏も「理想主義的観点が強すぎる印象が残る」と述べました。

 公明党の大口善徳氏は前文の意義を評価した上で、「加憲」の立場から「基本的人権の尊重を加えることは考えられる」と指摘し、生活の党の鈴木克昌氏は「国際貢献」を挙げ、「具体的に記すことを検討してもいい」と述べました。

 これに対し、共産党の笠井亮氏は「前文から不戦の誓いを削除することは、戦後の出発点を自ら否定するものアジアや世界で日本の孤立を招」と前文の見直し反対を表明しました
 民主党の三日月大造氏は「前文に日本らしさ歴史・伝統・文化などを盛り込むのは特定の価値観を国民に押しつけることになる。大局に立って検討すべき」と述べました。 

 歴史認識をめぐ議論では、自民党の西川京子氏が「占領下で作られた憲法は本来、破棄すべきだ」と主張したのに対し、共産党の笠井亮氏「侵略戦争をして断罪され、東京裁判判決を受諾する状況の中で憲法ができ、それが国際社会に日本が受け入れられる過程で大きな役割を果たした」と強調ました。

 自民党改憲案の国民に憲法尊重義務を課す考えに対しては、「憲法は国民が国家権力を縛るために制定されており、国民対象とはならない」などと他の全党が反対しました

 首相が改憲を主張していることに関しては、共産党の笠井亮氏は「改憲の立場でも、行政や立法に携わる時は憲法の尊重擁護義務が重く課せられる。時の権力者自らが改憲を主導しているのは重大だ」と非難し、生活の党の鈴木克昌氏も「多大な疑問を感じる」と同調しました。民主党の辻元清美氏は「為政者が99条の意味を理解していないなか、改憲の提案をするのは立憲主義の危機だ」と訴えた。
 それに対して自民党の土屋正忠氏は「99条は首相が行政権を行使する際に憲法違反をしてはならないという規定であり、政治家として意見を述べるのは当然」と反論しました。

 次回23日には、今の憲法で規定されていない緊急事態についての条文を盛り込むべきかどうかなどを議論します

 以下にNHKニュースを紹介します。
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衆院憲法審査会 前文を巡り議論
NHK NEWS web 2013年5月16日
衆議院の憲法審査会で、与野党7党が憲法の「前文」を巡って意見を表明し、自民党や日本維新の会、みんなの党が、日本の歴史や文化などに関する記述を盛り込むべきだと主張したのに対し、民主党や公明党は慎重な議論が必要だという考えを示しました。

衆議院の憲法審査会では、16日、委員がいる与野党7党が意見を表明しました。
このうち▽自民党は「歴史・伝統・文化に根ざした日本固有の価値を定めるべきだ。特に問題なのは、『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』という部分で、ユートピア的発想による自衛権の放棄にほかならない」と述べました。
 
▽民主党は「憲法の精神や基本目標をどうするかという大局に立って検討すべきだ。歴史・伝統・文化などを盛り込むべきとの意見もあるが、国民全体が共有できるのか、特定の人々や集団の価値観を国民に押しつけることにならないかなど、慎重な議論が必要だ」と述べました。
 
▽日本維新の会は「憲法の3原則である、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の趣旨を明記する方向で検討を進めたい。また、天皇陛下を『元首』と明記するとともに、歴史と文化に誇りを抱き、自由と民主主義を尊重し、多様な価値観を認める体制を堅持することをうたいたい」と述べました。
 
▽公明党は「加えるべき項目があるとすれば、憲法の3原則の1つである基本的人権の尊重だ。『日本人としてのアイデンティティーを共有できる記述が必要だ』という声もあるが、人によって考え方は異なるので、日本人全体で共有できるかどうかに留意して議論すべきだ」と述べました。
 
▽みんなの党は「時代を超えた憲法の基本的な原則を盛り込むべきであり、憲法の3原則を明記すべきだ。今の前文には、日本独自の歴史・伝統・文化・価値観が書かれておらず、国民が誇りと愛着を感じるような内容に改めるべきだ」と述べました。
 
▽共産党は「今の前文には憲法が立脚する基本原理が書かれており、仮に侵略戦争への反省と不戦の誓いを削除することになれば、日本が戦後の出発点をみずから否定するだけでなく、アジアや世界で日本の孤立を招き、国際社会で生きていく道を失うことになりかねない」と述べました。
 
▽生活の党は「前文は国を形づくる理念を明らかにするのが望ましく、3原則に『国際協調』を加えた4つが基本原則だ。国際平和の重要性が増していくなかで、わが国が積極的に貢献していく観点を具体的に記すことを検討してもいいのではないか」と述べました。
 
衆議院の憲法審査会は、去年から今の憲法の章ごとに議論してきましたが、16日ですべての章の議論が一巡しました。
審査会では、来週、今の憲法で規定されていない緊急事態についての条文を盛り込むべきかどうかなどを議論することにしています。