2013年5月16日木曜日

各紙社説は橋下批判の一色

 
 15日の各紙社説は、日経新聞と読売新聞を除き一斉に橋下の慰安婦発言に対する批判を掲げました。「これが政治家か」、「国際社会に通用しない、「公人として人間として落第」など極めて手厳しいものでした。
 因みに各紙の社説のタイトルは下記のとおりです。
 
橋下市長―これが政治家の発言か                      朝日新聞 社説 5/15
橋下氏の発言 国際社会に通用しない         毎日新聞 社説 5/15
橋下市長発言 女性の尊厳損ね許されぬ       産経新聞 主張 5/15
橋下氏「慰安婦」発言 公人として人間として落第だ  しんぶん赤旗 主張 5/15
橋下市長発言 歴史認識、人権意識を疑う        宮崎日日新聞 社説 5/15
橋下市長発言 女性を傷つけた罪深さ          北海道新聞 社説 5/15
[慰安婦発言]人権感覚が問われている         高知新聞 社説 5/15
橋下氏発言/個人の見解では済まない         神戸新聞 社説 5/15
橋下市長 慰安婦」発言 正当化してどうなるのか    福井新聞 論説 5/15
橋下氏の発言 女性の尊厳踏みにじる          信濃毎日新聞 社説 5/15
橋下氏止まらぬ発言 人権・沖縄…痛み広がる    東京新聞  5/15
橋下氏発言 批判に耳傾けて謝罪せよ          新潟日報 社説 5/15
 
 また社説欄を持たない「夕刊フジ」と「日刊ゲンダイ」は、それぞれ「橋下氏、参院選出馬ムリ?『慰安婦&風俗』発言 女性票逃げ外交・安保に疑問符」、「予言的中! 橋下維新 年内消滅」などの辛らつな記事を載せました。

 以下に朝日新聞と新潟日報の社説を紹介します。
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【社説】 橋下市長―これが政治家の発言か 
朝日新聞 2013年5月15日
 橋下徹大阪市長が、戦時中の旧日本軍の慰安婦について「必要なのは誰だってわかる」と語った。 
 橋下氏はさらに、沖縄県の米軍普天間飛行場の司令官と会談した際に、合法的な範囲内で風俗業を活用してほしいと進言したとみずから明かした。 
 発言に批判が広がると、今度は「貧困から風俗業で働かざるを得ないという女性はほぼ皆無。皆自由意思だ。だから積極活用すればいい」などとネット上で繰り返した。 
 こんな強弁が、通用するはずはない。 
 橋下氏の理屈はこうだ。 
 命がけで戦う兵士を休息させ、軍の規律を維持するには慰安婦は必要で、世界各国の軍にも慰安婦制度があった。それなのに日本だけが非難され、不当に侮辱されている。それは国をあげて強制的に女性を拉致したと誤解されているからだ――。 
 だが、いま日本が慰安婦問題で批判されているのは、そこが原因なのではない。 
 慰安所の設置や管理に軍の関与を認め、「おわびと反省」を表明した河野談話を何とか見直したいという国会議員の言動がいつまでも続くからだ。 
 戦場での「性」には、きれいごとで割り切れない部分があるのも確かだ。だからこそ当時の状況は詳しくわからないし、文書の証拠も残されていない。 
 それでも、多くの女性が自由を奪われ、尊厳を踏みにじられたことは、元慰安婦たちの数々の証言から否定しようがない。 
 橋下氏は「意に反して慰安婦になった方には配慮しなければいけない」とも語っている。 
 ただ、橋下氏の一連の発言は、元慰安婦たちの傷口に塩を塗るばかりでなく、いまを生きる女性たち、さらには米兵をも侮辱するものだ。 
 「風俗業を活用したら」と言われた米国から、「我々のポリシーや価値観からかけ離れている」(米国防総省の報道担当者)といった強い反応が出てくるのは当たり前だ。 
 橋下氏とともに日本維新の会の共同代表を務める石原慎太郎氏は「軍と売春はつきもので、歴史の原理みたいなもの」と橋下氏をかばった。 
 維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事も「そういう問題を建前でなく、本音で解決するために言ったと理解している」と話した。 
 この党には、橋下氏をいさめる政治家はいないのか。百歩譲って本音で解決するためというのなら、何をどう解決するのか示してほしい。

社説 橋下氏発言 批判に耳傾けて謝罪せよ
新潟日報 2013/05/15 09:10
 信じられないような発言である。人権に対してどういう感覚を持っているのか、全く理解できない。
 日本維新の会共同代表で大阪市長でもある橋下徹氏が、旧日本軍の従軍慰安婦について「必要だった」と公の場で述べたのだ。
 持論を展開した橋下氏は「銃弾が飛び交う中、精神的に高ぶっている猛者集団に(慰安婦が)必要なのは誰だって分かる」と強調した。これには驚くほかない。
 国内外に大きな波紋を広げたはずだ。閣僚や与野党幹部からも批判が相次いでいる。
 橋下氏は公党のトップで、政令指定都市の首長でもある。個人的見解だとことわって済む話ではない。
 慰安婦の女性は言語に尽くしがたい苦痛を強いられたのである。発言は、極限状態で戦う兵士が欲望を発散させる対象なのだから、慰安婦を認めるべきという内容だ。
 女性を軽視するものだと、各地で怒りの声が渦巻いている。また、家族と別れて戦地に赴いた男性をも卑下しているとの批判も出よう。
 韓国や中国と日本との関係は、閣僚の靖国神社参拝、安倍晋三首相の歴史認識などをめぐって冷え込んでいる時期だ。米国も安倍首相に懸念を示している。
 今回の発言はタイミングが悪すぎるし、今後の外交にも支障をきたすのではないか。
 橋下氏は、従軍慰安婦の問題で強制性と旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を強く非難していた。
 一方で第1次安倍政権が2007年に「強制連行の証拠はない」と閣議決定したことは評価している。
 国家観や歴史観で首相と距離が近いことを示し、他党との差別化を図ろうとの意図があるのだろうか。
 たとえ国際社会の反発を招いても、踏み込んだ主張が党勢にプラスに働くと考えているのだとしたら、その政治勘には疑問符が付く。
 さらに看過できないのは、橋下氏の沖縄での発言である。大型連休に沖縄を訪問した際、米軍の司令官に風俗業をもっと活用するように進言したのだという。
 「海兵隊の猛者」の性的エネルギーをコントロールするためだとの理屈だ。論外である。
 司令官は苦笑いをしながら「米軍では禁止だ」と答えたのだが、橋下氏は「建前論だと人間社会は回らない」と反論した。
 沖縄の米軍はこれまでの不祥事の反省から、規律の強化に取り組んでいる時である。
 橋下氏の「提案」は、米国防総省の政策や米国の法律に逆行するとの見解が在日米軍から示された。当たり前のことだ。
 維新の石原慎太郎共同代表は、橋下氏の慰安婦容認は擁護していたが、党については「衆院選の時のような昇り竜の勢いとは言えない」と危機感を表している。
 橋下氏は強がってばかりいないで、ダメージの大きさを真摯(しんし)に反省してはどうか。内外の批判に耳を澄ませて、発言を謝罪するのが賢明だ。