2013年5月31日金曜日

自民党は徴兵制も明記すべきと

 
 信濃毎日新聞が「国防軍 徴兵制を導入するのか」と題する社説を掲げました。
 「自民党3年前に憲法改正の論点として徴兵制導入の検討を示唆したが、参院選を控えていたため改憲案に含めなかった。昨年12月の衆院選でも、自民党は国防軍保持を掲げながら徴兵制には触れず大勝した。このように徴兵制問題が表に出るのを避けいるが、少子化が進世界展開する国防軍を維持するには徴兵制が必要といわれるなか、それを隠して参院選を戦うのは不誠実」とする主旨のもので、もっともな主張です。

 名古屋大名誉教授の森英樹氏は、自民党の改憲草案に「徴兵制」を実現するための仕掛けが盛り込まれていることについて、「(要旨)改憲草案の9条3の『国は国民と協力して領土領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない』という義務規定は国民に国への協力を義務付けるもの、前文にも『日本国民は国を自ら守り』とある。現行憲法は18条で“何人も奴隷的拘束を受けない”と徴兵制に歯止めをかけているが自民党の改憲草案ではその文言も削除されている」と述べています
       2013年4月13日「自民改憲草案には海外派兵も徴兵制も組込み済み」 

 自民党の改憲草案が徴兵制を意図したものであることは明らかです。将来万一国防軍を持つような事態になれば、アメリカの世界戦略に組み込まれて海外展開を強制され、結果として兵員が不足するので徴兵制が敷かれ、軍事予算が膨大化して財政は破綻へと、破滅へのコースを一直線に進むことになります。
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【社説】 国防軍 徴兵制を導入するのか 
信濃毎日新聞 2013年5月30日
 国防軍ができると徴兵制になるのか―。世間でもインターネット上でも飛び交っている問いだ。この答えはない。「国防軍」構想を掲げる自民党が軍の中身を説明していないからだ。
 肝心な部分の説明を避けて夏の参院選を戦い、憲法改正に道を開く狙いとすれば、国民に対し不誠実と言われても仕方がない。
 自民党は昨年4月に憲法改正草案を発表した。現行憲法9条の2項「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除。代わって「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」を新設した。
 国防軍とはどんな組織なのか。
 集団的自衛権行使に関する憲法上の制約をなくしたり、国際平和活動での武力行使を可能にしたりするなどの点からみると、単に自衛隊の名称変更でないことは明らかだ。ただ、草案では「国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」とある。つまり、軍の中身は改正憲法が成立してから別に決めると言っているのだ。
 3年前にこんなことがあった。
 自民党憲法改正推進本部が草案をつくる上での論点を公表した。その中で「民主主義国家における兵役義務の意味や軍隊と国民との関係について、さらに詰めた検討を行う必要がある」と記述。徴兵制導入の検討を示唆した。参院選が4カ月後に迫っていた。当時の谷垣禎一総裁は「徴兵制の議論をしているとは理解していない」と改憲案に含めない方針を示した。
 昨年12月の衆院選でも、自民党は国防軍保持を掲げながら徴兵制には触れず、大勝した。
 党が作成した草案Q&Aにはこう書かれている。党内論議で多く出た「国を守る義務」について「徴兵制について問われることになるので、憲法上規定を置くことは困難であると考えました」。
 自民党は、徴兵制問題が表に出るのを避けようとしているように見える。
 少子化が進む中で徴兵制なしに世界展開する国防軍を維持するのは難しいという見方がある。一方でコストがかかり過ぎ、徴兵制導入は非現実的という意見もある。
 国防軍をどうつくるつもりなのか。あいまいなまま国民の信を問うことは許されない。今度の選挙では説明を避けないでほしい。
 
 

2013年5月30日木曜日

自民党古賀氏が96条改正は絶対反対と


 自民党の古賀誠元幹事長が「しんぶん赤旗」のインタビューに応じ、「憲法は最高法規。他の法規を扱う基準と違うのは当然だ。諸外国を見ても改正のハードルは高い」として、96条の改正「絶対やるべきではない」と述べるとともに、9条に関して「平和憲法の根幹で『世界遺産』だ」と述べたということです
 インタビュー記事は6月2日付の同紙日曜版に掲載されます

 古賀氏は日本遺族会の会長をつとめ、最近もTBS番組で「村山談話を出す時、どういう文案にするか本当に苦労した。戦後長い間かけてやっと一つの方向性が出した非常に大事な談話で、歴代の政権がきっちりと継承するのは当然のことだ」として、高市早苗氏の発言を批判しました。

 もともと自民党は強硬な右翼から中道ハト派まで幅広く分布していることが特徴でした(最近はその傾向が薄れました)が、幹事長経験者が赤旗のインタビューに応じるのは非常に珍しいということです

 以下に毎日新聞の記事を紹介します。
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自民党:古賀氏が96条改正に反対 「赤旗」に来月掲載
毎日新聞 2013年05月29日 
 自民党の古賀誠元幹事長が共産党機関紙「しんぶん赤旗」のインタビューに応じ、憲法改正の発議要件を緩和する96条改正について「絶対にやるべきではない」と強く反対したことが分かった。自民党の元幹部が赤旗に登場するのは異例。安倍晋三首相は96条改正に前向きだが、歯止め役のいない党内への懸念が背景にあるとみられる。6月2日付日曜版に掲載される。

 古賀氏は「各議院の総議員の3分の2以上」という発議要件に関し「憲法はわが国の最高法規。他の法規を扱う基準と違うのは当然だ」と指摘。自民党は憲法改正草案で「過半数」への緩和を掲げているが「ハードルを下げることは認めることはできない」と反対姿勢を鮮明にした。

 9条については「平和憲法の根幹。その精神が一番ありがたいところで、『世界遺産』と言っている」と平和主義の堅持を主張。そのうえで「自衛隊は9条2項(戦力不保持)を1行変えて認めればいい」として、限定的な改正にとどめるべきだとの考えを示した。

 古賀氏はこのところ、テレビ番組に出演するなど改憲への慎重論を発信している。記事では戦争遺児としての生い立ちに触れ「二度と戦争を起こしてはならない。インタビューを受けたのも、戦争を知る世代の政治家の責任だと思ったからだ」と述べ、慎重な党内論議を促した。【竹島一登】
 
 

2013年5月29日水曜日

米軍無人偵察機が来夏三沢配備の可能性

 
 国連の人権高等弁務官法的根拠と透明性が欠如していると懸念を示しているアメリカ攻撃無人機と、同じ技術で運用される筈の米軍の無人偵察機が来夏米軍三沢基地に配備される可能性があることを、同基地の米軍司令官が明らかにしました。
 もし配置されれば周辺国の神経を苛立たせることは明らかです。
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米軍無人偵察機、来夏三沢配備の可能性
デーリー東北新聞   2013年05月29日
 
 米軍三沢基地のスティーブン・ウィリアムス司令官は28日、同基地内で会見し、最新鋭無人偵察機グローバルホークの米領グアムからの季節限定配備について、「来年(夏ごろ)の配備の可能性を検討していることは承知している」と述べた。
 司令官は、司令部のある太平洋空軍が検討しているグローバルホークの三沢配備を「計画は調整中だが、米国の経費削減により、太平洋空軍は(上級部署から)通知があるまで、計画延期を決めた」と明言。今年夏の配備との報道について「聞いていない」とした上で、来年夏の配備の可能性に言及した。
 
 

96条改定に反対が増加 5月世論調査

 28日付の本ブログ記事「自民・維新・みんなの改憲勢力連携は支持されず」で、産経新聞の世論調査で自民党の主張する96条改定に対して反対が増加していることを報じましたが、新聞社などの5月に入ってからの世論調査によると、96条改定に対する賛否は以下のとおりです。
実  施  機  関
改定に賛成
改定に反対
どちらとも
報道日付
産経新聞+FNN
32.3%
52.0%

5月28日
毎 日 新 聞
41%
52%

5月20日
読 売 新 聞
35%
51%

5月12日
(↓上旬のデータ)




J  N  N
30%
46%
23%
5月3日
N  H  K
26%
24%
47%
5月3日
朝 日 新 聞
39%
52%

5月2日
 NHK(月3日)以外はすべて改定に「反対」が「賛成」を10ポイント以上 上回っていることが分かります。
 とりあえずは参院選に向けて、自民党の主張する「96条:憲法改定要件の緩和」が、邪道・不正なものであることがさらに国民の間に浸透していって欲しいものです。

 遅まきになりましたが、5月中旬以降に実施された世論調査の記事を紹介します。
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毎日新聞調査:憲法96条改正、反対52%
毎日新聞 2013年05月20日
 毎日新聞が18、19両日に実施した全国世論調査で、憲法96条を改正して改憲の発議要件を衆参両院の「3分の2以上」の賛成から「過半数」に引き下げることへの賛否を尋ねたところ、反対が4月の前回調査より6ポイント増え52%となり、賛成の41%を上回った。また、参院選の投票先を選ぶ際、96条改正をどの程度重視するかを聞いたところ、「大いにする」「ある程度する」が計64%で、「あまりしない」「まったくしない」は計33%にとどまった。【鈴木美穂】
 憲法96条改正は、特に女性の反対が4月の前回調査に比べ11ポイント増の54%となり、賛成の35%を大きく上回った。一方で、男性は、反対49%、賛成47%とほぼ拮抗(きっこう)している。支持政党別では、自民、日本維新の会両党の支持層で賛成が反対を上回り、自民支持層の59%が賛成と回答した。また、安倍内閣を支持する人の5割が賛成と回答したのに対し、支持しないとした人の8割が反対と答えた。
 参院選で投票先を選ぶ際、憲法96条の改正をどの程度重視するかをめぐっては、96条改正に賛成と答えた人の69%、反対とした人の64%が「大いに」または「ある程度重視する」と回答した。
 憲法改正について、自民党は積極的なのに対し、公明党は慎重に判断する立場だが、この問題をめぐる両党の対応が異なった場合、連立政権をどうすべきか尋ねたところ、「連立を解消すべきだ」は46%、「こだわる必要はない」は49%で拮抗した。
 ◇調査の方法
 5月18、19の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号を使うRDS法で調査した。福島第1原発事故で警戒区域などに指定されている市町村の電話番号は除いた。有権者のいる1550世帯から、912人の回答を得た。回答率は59%。

内閣支持72%、高水準を維持…読売世論調査
読売新聞 2013年5月12日
 読売新聞社は10~12日に全国世論調査(電話方式)を実施した。
 安倍内閣の支持率は72%(前回4月12~14日は74%)で、内閣発足から4回続いていた上昇は止まったが、高水準を維持した。不支持率は20%(前回17%)だった。
 安倍内閣が日本銀行との連携を強化し、成長重視の経済政策を進めていることを「評価する」は65%(前回67%)を占めた。安倍内閣が景気回復を実現できるとの回答は55%(同57%)に上った。ただ、景気回復を「実感している」という人は21%にとどまり、「実感していない」が76%に達した。
 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加については、「賛成」が55%(前回60%)で、「反対」は28%(同28%)となった。
 憲法96条で定められている憲法改正の発議要件を、衆参各院の3分の2以上の賛成から、過半数に引き下げることに「賛成」は35%、「反対」は51%だった。
 衆院選での「1票の格差」を是正するため、小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案が今国会で成立する見通しとなったことを評価する人は68%に達した。「0増5減」の実現後、選挙制度の抜本的な見直しを「急ぐべきだ」という回答は66%に上った。
 
 

2013年5月28日火曜日

無人機攻撃 誤爆殺をしても自軍に死者が出なければ良いのか+

 
 アメリカの無人機攻撃の運用実態が不透明で民間人被害が大きいと批判まるなか、オバマ大統領は運用をCIAから米軍に移し、厳格化して透明性を高めると約束しましたがとてもそんなことで解決できる問題ではありません。
 毎日新聞大治朋子記者の「無人機戦争の課題」NHKニュースを紹介します。
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発信箱  無人機戦争の課題
大治朋子(エルサレム支局)毎日新聞 2013年05月28日
 
 オバマ米大統領が先日、「テロとの戦い」について演説した。米兵を戦地に送るような大規模な戦闘から、無人機を使って「テロリスト」を殺害するピンポイント型に、より軸足を移すという。
 米国本土から衛星通信を使って無人機を遠隔操作し、海外にいる「テロリスト」を殺害する。そんな無人機戦争は、「米兵が死なず」「兵士派遣より安上がり」だとして、米国民の3人に2人が支持してきた。米議会は最近、運用実態が不透明で、民間人被害が大きいと批判を強めているが、長らく黙認してきた。痛みが伴わず、戦争という意識で受け止められにくいこともあるだろう。オバマ大統領は今回の演説で、無人機の運用を中央情報局(CIA)から米軍に移し、厳格化して透明性を高め、殺害対象をより限定的にすると約束した。
 
 だが運用がCIAから米軍に移っても、情報共有は軍内部や軍関係者が運営する機関などに限定され、議会が知りうる範囲は限られる。しかも国民の多くが支持する無人機について、本気で情報開示を求める議員がどれほどいるだろうか。
 最大の課題といわれる「民間人への誤爆」はどうか。元操縦士に取材したことがあるが、誤爆の大半は民間人をテロリストと認定する情報ミスによるのだという。標的の精査はCIAの仕事だが、冷戦終結後、その規模は縮小され、さらに無人偵察機の導入で「足で稼ぐ情報」は劣化が目立つそうだ。
 
 オバマ大統領は演説で、CIAという秘密の箱から「無人機戦争」を取り出し、白日の下にさらしたかのような印象で受け止められていないか。本質的な課題はまだ残されたままであることを、改めて認識しておきたい。
+
国連人権高等弁務官 無人機攻撃に懸念
NHK NEWS web  2013年5月28日
アメリカなどが対テロ作戦として行っている無人機による攻撃について、国連の人権高等弁務官は、法的根拠と透明性が欠如したまま、より多くの国が無人機攻撃の技術獲得に向けて動いているとして、強い懸念を示しました。

国連のピレイ人権高等弁務官は27日、スイスのジュネーブで世界の人権状況を報告し、この中でアメリカなどが対テロ作戦としてパキスタンやイエメンなどで行っている無人機による攻撃について、「攻撃の透明性や法的根拠が欠如している」と指摘しました。
そのうえで、「より多くの国が無人攻撃機の技術獲得に向けて動いていて、人権への影響に強く懸念している」と述べました。
さらに、アメリカのオバマ大統領が先の演説で、今後、より厳格に無人機を運用すると表明したことについて、「透明性を高める方針が示されたものの、完全な透明性の確保と全ての国際法の順守を各国に求めたい」と強調し、十分な情報公開を求めました。
アメリカは、無人機の攻撃について、「極秘の作戦」と位置づけ、これまで攻撃の有無を含めて情報を公開しておらず、パキスタンでは多くの民間人が巻き添えになっているとして、国民の間で反米感情が高まる要因となっています。
このため、オバマ大統領の先の演説を受けて、無人機の運用の透明性が今後確保されるのか注目されています。
 

自民・維新・みんなの改憲勢力連携は支持されず +

 産経新聞とフジテレビの合同世論調査で、自民と維新の連携を支持する意見が前月の20.7%から10.7%へと半減しました。
 橋下氏の慰安婦発言を「不適切」としたのが75.4%にのぼるなど維新への支持が失速し、今夏の参院選比例代表の投票先を維新としたのは前月より4・4ポイント減の6・4%なりました。
 
 安倍首相は一時は、公明が反対してもより保守色の強い維新やみんなと連携すること憲法改正に道が開けると踏んでいたようですが、橋下氏の慰安婦問題をめぐ維新の軋轢が顕著になりました。
 同時に維新とみんなの選挙協力も解消されました。
 参院選を前にして自・維・みの3党は今バラバラの状態になっています

 自民が参院選の公約で謳うとしている「憲法96条の改定」については、「反対」52・0%で「賛成」の32・3%を大幅に上回りました。前月は「反対」44・7%、「反対」が42・1%と微差だったので、このひと月の間に96条問題がメディアでも少し取り上げられるようになったことの反映と思われます

 ただ安倍内閣の支持率65・6%と依然として高く、憲法改正に「賛成」が61・3%と「反対」の26・4%を大きく上回っているのは気になるところです
              改正項目は指定されていません

 以下に世論調査結果の記事を紹介します。(産経新聞はテーマごとに記事を区切っていますので、他のテーマについては同紙電子版記事を参照下さい) 
 + 併せて憲法改正に向けた自民・公明・維新・みんなの各党の方向性の違いに関する東京新聞の記事を紹介します。

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改憲勢力結集に影、自維連携派は10%に半減
産経新聞 2013.5.27 
 日本維新の会共同代表、橋下徹大阪市長の慰安婦に関する発言で維新への支持が急落したことは、安倍晋三首相(自民党総裁)が目指す参院選後の改憲勢力の結集に影を落としている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、自民と維新の連携を望む回答が前回4月の20.7%から10.7%へと半減した。維新、みんなの党との連携を想定してきた首相は、戦略の練り直しを迫られている。

 慰安婦問題をめぐっては、自民と維新の軋轢(あつれき)が顕著になっている。
 「私たちは政府・与党が一体となってやっている。『二枚舌』とか、そういうご発言は気をつけてなさっていただきたいものだ」
 自民党の石破茂幹事長は27日の記者会見で、橋下氏が旧日本軍による慰安婦募集の強制性を認めた河野談話に対する政府・自民党の姿勢を「二枚舌だ」と批判したことに反論した。
 合同世論調査では、参院選後の自民とみんなの連携を望む回答も前回並みの5.3%にとどまり、逆に「どの政党とも連携すべきでない」との回答が33.5%から41.5%へと8ポイントも増加。公明党との連立維持を望む意見も18.3%から20.5%に微増した。
 自民党を支持する保守層には、公明が反対しても、より保守色の強い維新やみんなと連携することにより憲法改正に道が開けるとの見方が強かった。首相も一時、「公明抜き」を検討したふしがある。
 ところが、維新は橋下氏の発言により失速し、一方のみんなは維新との選挙協力を解消し、参院選での連携先として民主党を模索している。このまま維新の失速や、みんなとの選挙協力が頓挫したままでは、改憲勢力の議席が憲法改正の発議に必要な3分の2に届かない可能性がある。
 公明党を除いた「自維み」による連携シナリオが風前のともしびとなったことを見透かしてか、公明党の井上義久幹事長は27日の大阪市内での講演で、自民党が単独過半数を獲得するのは困難だと指摘。その上で「よほどのことがない限り、自公政権は続く」と強調した。(水内茂幸)

自公の溝 くっきり 衆院憲法審 検証ひと区切り
東京新聞 2013年5月27日
 衆院憲法審査会は今年三月から始めた現行憲法の章ごとの検証をひと通り終えた。論点整理を通じ、連立政権を組む自民、公明両党の距離や、日本維新の会、みんなの党など改憲勢力の中の方向性の違いが浮き彫りになった。 (岩崎健太朗)

 「党の改憲草案を用意したことで議論が活発になり、雰囲気が以前とだいぶ変わってきた。(改憲の発議に必要な)三分の二以上も見えてきたと思う」
 自民党憲法改正推進本部長代行の船田元氏はこう議論の手応えを強調した。公明党の斉藤鉄夫氏も「党内で加憲の具体案を詰める上で、大いに参考になった」と述べた。
 しかし、こうした評価とは裏腹に、審査会の議論を通じ、自公両党の憲法に対する「立ち位置」の違いが鮮明になった。自民党が重視する九条改憲の中身に、公明党は「(党内では)集団的自衛権の行使は認めるべきではないとの意見が大勢だ」と反対する姿勢を強めた。
 斉藤氏は、自民党が改憲案で外国人への地方参政権付与を禁じていることにも「公明党は(相手国と同じ権利を与える)相互主義の立場だ。外国ではほとんど地方レベルの選挙権が付与されており、選挙権の付与には一定の論拠がある」と反論した。

 安倍晋三首相が九六条改憲に向け「多数派を形成する上で協力を求めたい」と呼び掛けた日本維新の会みんなの党とも、改憲の優先順位が異なることが明らかになった。
 両党は統治機構改革に向け「一院制」「首相公選制」「道州制」を改憲項目に掲げるが、自民党の改憲草案には盛り込まれていない。逆に、与党が前向きな環境権の新設には、維新の一部から「中身がまだよく見えない」という声が漏れる。
 みんなの党に至っては「改憲の前に政治、官僚制度改革などやるべきことがある」と、拙速な改憲に待ったをかけてきた。「美しい国、強い日本といった見た目のよい衣の陰に、国防軍などのやいばを隠した戦時下の国家体制を賛美する勢力とは根本的に異なる」(畠中光成氏)と、自民党が目指す改憲との違いを際立たせ始めた。

 審査会は委員五十人のうち、自民党の委員が三十一人を占めるが、空席が目立った。二十三日の審査会で共産党の笠井亮氏は「議論が必要だと言っておきながら委員が出ない。こちらは真剣だ」と自民党を批判した。 
 

2013年5月27日月曜日

96条改定に各地弁護士会から批判声明や反対決議

 憲法96条を改定しようとする政府・政党の動きに対し、各地の弁護士会が続々と声明を出すなど批判を強めています
 日本弁護士連合会は3月14日に既に憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書」を出しました。
 
 以下に時事通信の記事と日弁連の「意見書」を紹介します。
(意見書は長文なため一部を省略してあります。全文はURLをクリックしてご覧ください)
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96条改正、弁護士会から批判=各地で声明、大阪・愛知は反対決議へ
時事通信 2013527
 憲法96条が定める国会の改憲発議の要件を緩和しようとする政府・政党の動きに対し、各地の弁護士会が声明を出して批判を強めている。大阪と愛知の各弁護士会は今週、それぞれ総会で緩和反対を決議する見通しだ。愛知県弁護士会の安井信久会長は「権力乱用を縛ってきた憲法の根本的な理念が変えられようとしていることを、市民に知ってもらいたい」と狙いを話す。
 衆参両院で3分の2以上の発議要件を過半数に緩和することについて、大阪弁護士会の決議案は「権力行使を制限される立場の政府が、制限を免れるために容易に発議できるようになる」と指摘。愛知の案も「憲法の安定性が大きく損なわれる」と警鐘を鳴らす。
 決議案は両会とも、代表の弁護士で構成される常議員会を通過済み。定期総会で過半数の賛成を得られる見通しだという。他に宮崎、長崎、長野、釧路の各会が今月、緩和反対の会長声明を出しており、宮崎県弁護士会は来月の総会で反対を決議する準備を進めている。
 安井会長は「政権は自民、民主、また自民とめまぐるしく変わった。人権擁護や平和主義といった基本的な原理を、時の与党の都合で変えられてはならない」と訴える。発議後の国民投票に最低投票率の仕組みがないこともあり、「国民投票があるから発議は2分の1でいいという議論は、ポピュリズムに近い」と懸念する。
 日本弁護士連合会憲法委員会で事務局次長を務める大阪弁護士会の笠松健一弁護士は「96条だけ先行改正するという議論はトーンダウンしてきたが、ここで油断せずに問題点を挙げていきたい」と話している。

憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書
2013年(平成25年)3月14日
日本弁護士連合会
意見の趣旨
  当連合会は憲法改正を容易にするために憲法第96条を改正して発議要件を緩和することに強く反対する
意見の理由
1 憲法第96条を改正しようとする最近の動き
   (省 略)
2 日本国憲法で国会の発議要件が総議員の3分の2以上とされた理由
 憲法は,基本的人権を守るために,国家権力の組織を定め,たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても権力が濫用されるおそれがあるので,その濫用を防止するために国家権力に縛りをかける国の基本法である(立憲主義)
 すなわち,憲法第11条は「この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与へられる。」とし,憲法第97条は「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて,これらの権利は,過去幾多の試練に堪へ,現在及び将来の国民に対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」とする。この基本的人権の尊重こそが憲法の最高法規性を実質的に裏付けるものであり,この条項に引き続く憲法第98条は「この憲法は,国の最高法規であって」と,憲法の最高法規性を宣言し,憲法第81条で裁判所に違憲立法審査権を与えている。憲法第96条の改正規定は,これらの条項と一体のものとして,憲法保障の重要な役割を担うものである
 憲法学説においても,憲法改正規定の改正は,憲法改正の限界を超えるものとして許されないとする考え方が多数説である(芦部信喜著「憲法第五版」(岩波書店)385ページ以下など)
 このように,日本国憲法は国の基本的な在り方を定める最高法規であるから,憲法が改正される場合には,国会での審議においても,国民投票における国民相互間の議論においても,いずれも充実した十分慎重な議論が尽くされた上で改正がなされるべきことが求められ,法律制定よりも厳しい憲法改正の要件が定められたのである
 もし,充実した十分慎重な議論が尽くされないままに簡単に憲法が改正されるとすれば,国の基本法が安易に変更され,基本的人権の保障が形骸化されるおそれがある。国の基本法である憲法をその時々の支配層の便宜などのために安易に改正することは,それが国民の基本的人権保障や我が国の統治体制に関わるだけに,絶対に避けなければならない
 現在の選挙制度の下では,たとえある政党が過半数の議席を得たとしても,小選挙区制の弊害によって大量の死票が発生するため,その得票率は5割には到底及ばない場合がありうる。(中 略)したがって,議員の過半数の賛成で憲法改正が発議できるとすれば,国民の多数の支持を得ていない憲法改正案が発議されるおそれが強い。その後に国民投票が行われるとしても,国会での発議要件を緩和することは,国民の多数の支持を受けていない憲法改正案の発議を容認することとなってしまうおそれがある。(中 略)
 なお,大日本帝国憲法第73条は,議員の3分の2以上の出席の下,出席議員の3分の2以上の賛成で憲法改正がなされると定められていた

3 諸外国の憲法との比較
   省 略
4 憲法改正手続法における国民投票の問題点
 (前 略)ところが,2007年5月18日に成立した(中 略)「憲法改正手続法」には,当連合会がかねてより指摘してきた重大な問題点が数多く存在する(中 略)
 例えば,国民投票における最低投票率の規定がなく,国会による発議から国民投票までに十分な議論を行う期間が確保されておらず(中 略),憲法改正に賛成する意見と反対する意見とが国民に平等に情報提供されないおそれがあり,公務員と教育者の国民投票運動に一定の制限が加えられているため,国民の間で十分な情報交換と意見交換ができる条件が整っているわけではない。このような状況で憲法改正案の発議がなされ,国民の間で充実した十分慎重な議論もできないままに国民投票が行われれば,この国の進路を大きく誤らせるおそれがある。そのため,憲法改正手続法を可決した参議院特別委員会は,これらの重大な問題点に関し18項目にわたる検討を求める附帯決議を行った。(中 略)
 国会においては,発議要件を緩和するなどという立憲主義に反した方向での議論をするのではなく,国民投票において十分な情報交換と意見交換ができるように,まずは憲法改正手続法を見直す議論こそなされるべきである。(後略)

5 結論
   以上のとおり,日本国憲法第96条について提案されている改正案は,いずれも国の基本的な在り方を不安定にし,立憲主義と基本的人権尊重の立場に反するものとしてきわめて問題であり,許されないものと言わなければならない。
 当連合会は,憲法改正の発議要件を緩和しようとする憲法第96条改正提案には強く反対するものである。
以上