2013年3月22日金曜日

屈辱を購うあてはどこに? 政府のTPP試算に批判噴出


自民党が21日に開いた農林部会、農林水産戦略調査会などの合同会議で、政府の行ったTPPの影響試算に対して、基本的な考え方が違っているとする批判が相次ぎました。

 曰く、 試算対象の33品目以外の作物で生計を立てている人たちのことはどうなるのか、今はものが行き渡っているので一部の食料品の価格が下がったからと言ってその分が他の消費に回るという時代ではない、プラス効果だけを過大に評価していて非関税障壁をなくすマイナスやサービス自由化のマイナス分がカウントされていない、北海道内だけで11万人の雇用減少がある、農業生産額の減少だけをカウントしてそれに伴う関連産業のマイナスはカウントされていない、 等々です。

 自民党はいち早く政府一任を決めておいて、今さら何を言うのかという面はありますが、批判はいちいち尤もです。 

17年前にアメリカ、カナダと北米自由貿易協定(NAFTA)を結んだメキシコの現在の惨状を見れば、日本の将来も見通せます。
アメリカなどの多国籍企業がメキシコの農業や工業に参入した結果、メキシコの主食(トウモロコシ)の自給は崩壊し、零細な農民たちは仕方なくアメリカに移って農業や養豚、養鶏、食肉加工などの過酷で「のぞまれない仕事」につきました。アメリカへの移民者は合法・非合法を併せて2,000万人(人口の2割)にも上るということです。 

NAFTAで煮え湯を飲まされたメキシコとカナダは当初TPPに参加しませんでしたが、昨年10月から他国に遅れて参加しました。その時飲んだ屈辱の条件が後に明らかにされ、それを知った日本政府はビックリして両国に問い合わせたということですが、彼らがそれを忍んでも加盟したのは、日本が参加すれば数年後遅くとも10年後には農業が崩壊するので、その先は農業大国のアメリカ・カナダそしてメキシコが自由に価格を協定して日本に対して永久に食料を売りつけることができるという見通しがあったからだと言われています。しっかりした見通しがあったわけです。
 
それでは日本にはそうした屈辱を購うどんな見通しがあるというのでしょうか。
 
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自民農水合同会議 政府試算に批判噴出
東京新聞 2013322 

 自民党は21日、農林部会、農林水産戦略調査会などの合同会議を開き、安倍晋三首相のTPPへの交渉参加表明に合わせて政府が公表した影響試算について議論した。参加者からは、試算の対象や前提の置き方に批判が相次ぎ、政府側は答えに窮した。(清水俊介)

 試算は、TPP交渉の結果、加盟各国の関税がすべて撤廃されたことを条件に、その十年後の国全体の経済規模を、現行の関税が残った場合と比べて機械的に算出したもの。
 試算によると、工業製品の輸出増などにより企業が利益を上げ、所得も増えて個人消費は拡大。企業の投資も増えて、国内総生産(GDP)を61兆円押し上げると見積もる。一方、海外からの輸入に押され、農産品などの国内生産は29兆円減少。差し引きしてGDPは32兆円増えるとした。

 合同会議では、関税の撤廃で消費者物価が下がり、結果的に消費が3兆円伸びるとの政府の計算に批判が続出した。
 今村雅弘元農林水産副大臣は「食料品などが安くなったから他のものを買うという時代ではない」と指摘。野田毅元自治相は「取らぬたぬきの皮算用。プラス効果を水増ししている」と酷評した。
 試算が、TPP参加のマイナスを農業生産の減少にしか触れていないことにも多くの異論が出た。政府が重要品目に位置付ける方針の砂糖は国産と外国産で品質にほとんど差がない。関税が撤廃されると、サトウキビなどの国産原料は全て外国産に置き換わり、国内の生産額が1500億円減るとされた。

 これに対し、宮路和明元厚生労働副大臣は「サトウキビが作られなくなると、製糖工場がなくなり、機械業者にも影響がある。関連産業のダメージのほうが大きい」と強調。「6兆~7兆円の損害があり、(32兆円の)プラス効果は帳消しになる」と訴えた。
 このほか複数の出席者が「雇用機会がどれだけ失われるかは出さなければいけない」と試算に注文を付けた。

 合同会議の進行役を務めた小里泰弘農林部会長は「農業がだめになれば、加工業、流通業など他産業にも影響が出る、という観点からも新たな試算は必要だ」と締めくくり、政府側に対応を求めた。