2013年3月20日水曜日

原発被災支援法の早急な施行を


 昨年6月全会一致の議員立法で成立した「原発被災者支援法」が、いまだに棚ざらしになっていることを批判する社説を東京新聞が掲げました。
支援法は日本版「チェルノブイリ法」と呼ばれ、一定の線量以上の放射線被が予想される「支援対象地域」からの避難、居住、帰還といった選択を、被災者が自らの意思によって行うことができるよう、国が責任をもって支援しなければならないと定めたものです。
被災者にとっては死活にかかわる法律であるにもかかわらず、支援法に基づいて決められる筈の諸々の具体策・具体案の策定が全く進んでいないということです。
なぜ長い間放置されたままになっているのでしょうか。 

参考にしたと言われるチェルノブイリでは、居住可能限度を5mSv/年とし、1 mSv/年以上の地域は「移住(避難)の権利地域」と定め、とどまる人にも離れる人にも医療や生活を支援しましたが、日本ではどうでしょうか。
国は3.2μSv/H=28mSv/年以上の地点をスポット毎に「特定避難勧奨地点」と定め(妊婦や乳幼児のいる世帯でようやく2.0μSv/H=18mSv/年)、指定の世帯には1人月10万円の賠償金が払われるものの、それ以外の地域には払いません※1そもそも現行法令による放射能の許容限度は1 mSv/年なので、それを大幅に上回る法令違反の措置です。
※1 1224日「特定避難勧奨地点の判定基準 日本の恐ろしい現実」

また国や県が「放射線は心配しなくて良い」というムードを先導するために、被曝の惧れを感じながら居住している人たちにとって、被曝の軽減や回避を許さない雰囲気が醸成されているという現実もあります2
2 1014日「放射能汚染地域にニ重の悲劇が生まれています」

 こうした後進性を脱し被曝の被害を少しでも軽減するためにも、一刻も早く細部を詰めて施行して欲しいものです。
 
 以下に東京新聞の社説を紹介します。
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【社説】 原発被災支援法 いつまで待たせるのか
東京新聞 2013319 

 支援はいつ始まるのか。「原発被災者支援法」は福島だけでなく、もっと幅広く、公的支援の外に置かれる近県の住民や自主避難者らにとっても頼みの綱だ。待ち望む被災者を裏切ってはならない。
 「原発事故子ども・被災者支援法」は、日本版「チェルノブイリ法」と呼ばれ、昨年六月の国会で、超党派提案の議員立法として全会一致で成立した。福島原発事故によって被害を受けている子どもや住民に「避難の権利」を認め、健康や暮らしの支援を目的にする。原発事故の避難区域外の住民には支援がなく、広い地域の支援を目指しているが、施策を仕切る復興庁が根幹になる基本方針すら定めていない。全国会議員が賛成した法律が九カ月もたなざらしというのは、異常だ。

 今月、国会で開かれた市民集会は、動かない政府への異議申し立てさながらだった。放射能汚染と戦ってきた各地の代表がこの二年を報告し、法の具体化を訴えた。
 福島県境の宮城県白石市に住む古山智子さんは、「県境で支援を線引きしないで」と訴えた。県南部は年間被ばく線量が、一般の被ばく限度の1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)を超え、福島と変わらない地域が珍しくない。だが、継続的な健康調査もない。文部科学省のモニタリング地点はあるが、周辺が除染されて線量が低い。深刻さが隠されているようで不満だ。
 同じく県境の栃木県那須塩原市の手塚真子さんも、子どもの健康被害を心配する。有志を募り、福島県の病院と提携して甲状腺がん検査を実施すると、希望者が殺到して対応しきれなかった。
 線量は下がったとはいえ、事故前より高い。福島市から新潟市に自主避難中の村上岳志さんは、余計な被ばくを避けたい思いを認められるべきだと訴える。

 低線量被ばくを恐れながらも、地域がぎくしゃくするのを恐れて声を上げられず、地域に残る住民は大勢いる。だからこそ支援法は自己決定権を尊重する。元の居住地にとどまっても、離れても、分け隔てなく被ばくを避ける権利を保障する。支援は健康管理や就労、就学、医療、保養など。体内に入った核種を調べる内部被ばく検査は今すぐ行うべきだ。
 「チェルノブイリ法」も、年間被ばく線量が1ミリシーベルト以上の地域を「移住(避難)の権利地域」と定め、とどまる人にも、離れる人にも医療や生活を支援した。日本ができないはずがない。被災者に希望を持たせてほしい。