2013年2月7日木曜日

東電の虚偽説明で国会事故調が立入りを断念


 東電が昨年2月に、福島第一原発の国会事故調査委員会に、虚偽の説明をして1号機の非常用復水器(IC)の立入調査を断念させたことが明らかになりました。
国会事故調は建屋4階に設置された重要機器のICが、東電の主張とは違って地震直後(津波が来る前)に壊れた可能性があるとしてそれを確かめるつもりでした。それに対して東電は、「原子炉建物をカバーしたため真っ暗で調査が出来ない」と説明したのですが、実際には光透過性(16%)のある屋根材質を使い、天井には強力な水銀灯を5基つけてあるのでICの調査は可能でした。 

地震の発生直後から原子炉建屋の各所から水や蒸気が噴き出したことは、当時の現場作業員が語っています。また問題のIC周りの配管では、僅かに0.3平方センチメートル相当の亀裂が入っただけで、毎7トンの水が流出し原子炉内の水面を低下させるので、福島原発1号機と同じ時間経過で核燃料を溶融させることが201112月の時点で既に解析されていました。 

この意味で1号機のICの調査は非常に重要だったのですが、地震のみによって機器や配管が破損して重大事故に至ったということになると、それまで津波が原因だとしてきた東電の主張が破綻するので何としてでもそれを防ぎたかったものと思われます。東電広報部は説明に誤りがあったと認めたうえで「何らかの意図を持って虚偽の報告をしたのではない」としていますが、1時間にもわたって虚偽の説明を繰り返して立入調査を断念させた意図は明瞭です。 

国会事故調は既に解散していますが、現地調査の責任者だった田中三彦元委員(元原子炉設計技術者)は虚偽説明で調査を妨害されたとして7日にも、衆参両院議長に非常用復水器(IC)の調査実施を申し入れる方針だということです。 

 以下に朝日新聞と20111215日の東京新聞の記事を紹介します。
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東電、国会事故調にウソ 「原発内真っ暗」→調査断念
朝日新聞 201327 

【木村英昭】 東京電力が昨年2月、福島第一原発1号機の現地調査を決めた国会事故調査委員会に、原子炉が入る建物の内部は明かりが差し、照明も使えるのに、「真っ暗」と虚偽の説明をしていたことがわかった。国会事故調は重要機器の非常用復水器が、東電の主張と違って地震直後に壊れた可能性があるとして確かめるつもりだったが、この説明で調査を断念した。 

 国会事故調は解散しているが、現地調査の責任者だった田中三彦元委員(元原子炉設計技術者)は東電の虚偽説明で調査を妨害されたとして7日にも、衆参両院議長に非常用復水器の調査実施を申し入れる方針。

 国会事故調は、2011311日の地震発生直後に1号機原子炉建屋の4階で「出水があった」との目撃証言を複数の下請け会社の労働者から得た。 
 

福島1号機配管 地震で亀裂の可能性
東京新聞 20111215 

 経済産業省原子力安全・保安院が、東京電力福島第一原発1号機の原子炉系配管に事故時、地震の揺れによって03平方センチの亀裂が入った可能性のあることを示す解析結果をまとめていたことが分かった。東電は地震による重要機器の損傷を否定し、事故原因を「想定外の津波」と主張しているが、保安院の解析は「津波原因説」に疑問を投げかけるものだ。政府の事故調査・検証委員会が年内に発表する中間報告にも影響を与えそうだ。 

 これまでの東電や保安院の説明によれば、311日午後246分の地震発生後、1号機では、非常時に原子炉を冷やす「非常用復水器(IC)」が同52分に自動起動。運転員の判断で手動停止するまでの11分間で、原子炉内の圧力と水位が急降下した。この後、津波などで午後337分に全交流電源が喪失し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が使えなくなったため、炉心溶融が起きたとされる。 

 一方、経産省所管の独立行政法人・原子力安全基盤機構が今月上旬にまとめた「1号機IC作動時の原子炉挙動解析」は、IC作動時の原子炉内の圧力と水位の実測値は、ICや冷却水が通る再循環系の配管に03平方センチの亀裂が入った場合のシミュレーション結果と「有意な差はない」と結論付けた。圧力と水位の急降下は、03平方センチの配管亀裂でも説明できるという。0.3平方センチの亀裂からは、一時間当たり7トンもの水が漏えいする。 

 東電は2日に発表した社内事故調査委員会の中間報告で、「津波原因説」を展開、地震による重要機器の損傷を重ねて否定している。