2013年1月13日日曜日

東電の不誠実


 東電の原発事故賠償に対する不誠実さは枚挙にいとまがありませんが、それでも取り上げざるを得ません。 

広瀬直己社長は10日、損害賠償の時効について「3年間の消滅時効の権利を主張するつもりはない」と初めて明言しましたが、信じがたいほどの対応の遅さをみればそれは当然のことでした。避難者に対する東電の損害賠償の手続きは大幅に遅れていて、昨年7月に支払い基準を定めて発表しましたが、所有者の確認方法などの手続きが難航して、請求のための書類の避難者への発送さえできていません。
避難者が請求できるのは、事故から2年以上経過してからになる見通しということです(毎日新聞 110日)。 

 避難区域に住んでいた東電社員に対し、「区域内に持ち家がなければ、通勤可能な新居に落ち着いた時点で、精神的苦痛に対する損害賠償を終わらせる」としたことで、「避難する家族と離れて現場にとどまっている人も多い。避難を転勤と同じように言われるとは!」と社員から憤りの声が上がっているということです(東京新聞1220日付)。
しかしそれは一般の被害者への基準を社員に適用したものなので、そちらの方こそが問題です。
 
勿論、自主避難者は損害賠償の対象外としています。 

 原発を持つ大手電力9社は、1970年度からの42年間で、計2兆4千億円を超える広告宣伝費(スリーマイル島事故~チェルノブイリ原発事故の間に倍増)を使い、東電はその4分の1 強の6445億円を支出しました(朝日新聞 1228日付)。
それほど安心・安全を強調してきたのなら、なぜ現実に起きた巨大事故の賠償に誠実に当たらないのでしょうか。

 12日付のNHKニュースと福島民友ニュースに、東電の不誠実さを示す記事が載りましたので紹介します。 

追記) 下記の記事も併せてご覧ください。
124日付「『東電の賠償計算おかしい』と農薬会社が提訴」
1018日付「許されない ウソ! デタラメ!」
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東電 和解申し立てた人に書類送らず
NHK NEWS web 2013112

原発事故の損害賠償で、東京電力の基準に納得できず国の「紛争解決センター」に和解を申し立てをした人に対して、東京電力がその後、賠償請求のための書類の送付を取りやめ、センター側から「差別的な扱いだ」として改善を求められていたことが分かりました。 

「原子力損害賠償紛争解決センター」は、東京電力が示した基準に被害者が納得できない場合、第三者の立場で和解を仲介する国の機関で、これまでに5000件余りの申し立てがありました。
この申し立てをした人について、東京電力がその後、賠償請求のための書類の送付を取りやめたうえ、そのことを被害者側に一切、知らせていないことが、関係者への取材で分かりました。
さらに、一定期間分の賠償金をまとめて支払う新たな手続きが去年10月から始まりましたが、センターに申し立てをしたことを理由に、請求を断られるケースが相次いでいるということです。

被害者側からの指摘を受けて、紛争解決センターは、申し立てによって扱いが異なるのは「差別的だ」として、東京電力に改善を求めています。
東京電力は、書類を送らない理由について、「会社側の基準に納得できない被害者の感情を逆なですると考えた。求めがあれば送っている」としています。
また、請求を断ったケースについては、「対応窓口への指示が適切でなかったためで、申し立てを理由に請求を断ることがないよう徹底したい」としています。
 

東電賠償1階家賃のみ 汚染砕石マンション発覚から1年
福島民友ニュース 2013112 

 放射性物質に汚染された浪江町産の砕石が二本松市の新築マンションに使われ、1階全4戸のみ周辺の屋外より高い放射線量が計測されている問題で、東京電力が4戸の家賃のみ賠償する方針をマンション施工・管理会社に提示していることが11日、分かった。建て替え費用を求めている同社は「要求とかけ離れており納得できない。建て替えなければマンション経営が行き詰まるのは目に見えている」と頭を抱える。

 東電が昨年1227日付で提示した賠償に関する文書によると、賠償対象は1階の家賃分のみで、賠償期間はコンクリート建物の耐用年数47年。いずれ支払額を家賃分から利益分に下げるほか、価値低下による減額措置を講じるとし、この内容が「最大限の努力」としている。東電広報担当者は「提示した賠償内容の経過や理由は個別案件なのでコメントできない」とした。

 施工・管理会社幹部は、賃貸マンションとしての価値、評判が下がり、入居者を確保できるかどうか不透明で「経営や地域への影響を考えれば建物撤去や建て直しは避けられない」と訴える。

 マンションの汚染問題は昨年1月に発覚してから1年になるが、この間に1階入居者は全て転居した。