2013年1月24日木曜日

柏崎刈羽原発 県民投票条例案を県議会が否決 +


新潟県議会は23日午後、市民団体「みんなで決める会」が直接請求した東電柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を、反対多数で否決しました。住民が直接請求した県民投票がその入り口で葬られてしまい残念なことです。

それにしても県議会の大半が「国策だから住民投票にはなじまない(反対すべきではない)」として条例案自体に反対したことには、多くの人が違和感を持ったのではないでしょうか。それは「国策で設置した福島第Ⅰ原発があの惨禍※1を引き起こした」という事実ひとつで論破されてしまう性質のものだからです。
※1 本当の深刻さは20年後、30年後にならないと分からないといわれていま
 また「二者択一では民意を適切に反映できない※2」という理由についても、再稼働の賛否にはいろんなニュアンスが存在するにしても、それらは必要なら県がアンケート調査を行えば良いことであって、本件の場合は「再稼働に反対か否か」の二者択一でも十分に目的が達成されるのではないでしょうか。
※2 これは知事の意見の中にもありました 

 知事は「県民の声を聞こうという条例案が否決され大変残念だ」と述べたということですが、この際知事の意見についても考えてみたいと思います。
「(1)いまは福島第1原発事故の検証中。稼働の是非を判断するための科学的情報が不足で住民投票を提案できる段階でない」というのは、「少なくとも解明が済むまでは稼働できない」ということの説明ではあっても、「安全が証明されないのだから稼働に反対」の主張に対する反論にはなっていません。

「(2)原発停止の際の地域振興策や賠償問題についての記載がない」については、法的に賠償が必要であれば行うしかないので、県民にその覚悟はある筈です。

「(3)使用済み核燃料の処分問題」というのも、「原発を止めると核燃料の処分が出来なくなる」というのは全く逆であって、このまま原発の稼働を続ければあと数年で日本の多くの原発で廃燃料保管プールが満杯になって、運転の継続が不可能になることが知られています※3    
   ※3 昨年94日付東京新聞「核燃料プール 数年で満杯 6割が運転不可に」(添付)参照
 そもそも核燃料の再処理技術は、何時になれば完成するのかまだ目途もたっていません。それに日本がそれをやること自体に海外から反対の声が上がっています。また仮に廃燃料のガラス固化が出来ても、それを地中深くに永久に保存できる地層は日本の国土には存在しないというのが日本学術会議の最近(昨年)の結論です4
4 昨年9月11日付東京新聞「核のごみ地中廃棄「白紙に」 学術会議原子力委へ提言」(添付)参照

「(5)県条例では各市町村に投票事務を強制できない」については、浜岡原発の住民投票条例案の際にも、静岡県側が各市町村に依頼するためには多大な時間を要すると主張しました。しかし本当にそうなのか(沖縄県では短期間で行われた由))、単に拒絶的に言うのではなく「行政のプロ」として知恵を発揮して欲しいものです。 

 「投票期限90日」と「投票権者は18歳以上」については、煩雑な追加的業務を厭う行政側からいつも強い拒否反応が示される事項なので、これは提起者側が当初から考慮した方が良いように思われます。 

 以下に新潟日報および東京新聞の記事を紹介します。  

    24日付新潟日報社説を追記

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県議会、原発県民投票条例案を否決
泉田知事 「県民の声を聞こうという条例案否決され残念」
新潟日報2013123 

 県議会は23日午後、臨時会本会議を開き、市民団体「みんなで決める会」が直接請求した東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を採決、自民党や民主党などの反対多数で否決した。一部県議が動議で提出した修正案も否決した。原発再稼働をめぐって直接請求された住民投票条例案の否決は、大阪市、東京都、静岡県に続き全国で4件目。 

 採決は議長と欠席した自民の1人を除く計51人で行われ、条例案、修正案とも反対44人、賛成7人で否決した。内訳はいずれも反対が自民31、民主6、公明1、無所属6。賛成は社会民主県民連合2、共産1、無所属4 

 23日午後の本会議では、社民、共産、無所属の計7人が修正案を動議で提出した。修正案は条例案で「条例施行後90日以内」としていた県民投票の期日の制限を外し、「永住外国人を含む18歳以上」としていた投票資格者を「20歳以上の日本人」に変更した内容。社民の小山芳元氏が「68千人を超える署名をした県民の思いをしっかりと受け止めてほしい」と趣旨弁明した。 

 条例案、修正案について一括で討論が行われ、自民の石井修氏が「重要課題について多様な民意の集約を求める県民投票は(原発問題に)なじまない」、民主の市川政広氏が「二者択一では県民の意思を反映できない」などと反対理由を説明。共産の竹島良子氏は「原発の在り方について県民投票条例で討論を広げることは大変重要」と賛成理由を述べた。 

 本会議終了後、泉田裕彦知事は取材に、「議会の半数を超える意見として『国策だからなじまない』という否決理由だった。県民の声を聞こうという条例案が否決され、大変残念だ」と述べた。
 

核燃料プール 数年で満杯 6割が運転不可に
東京新聞 201294 

 全国の原発50基のうち約6割の33基が、数年間稼働させれば使用済み核燃料プールが満杯になり、動かせなくなることが、各電力会社への取材で分かった。新たに中間貯蔵施設を造るには十年はかかり、使用済み核燃料を再処理しても核のごみは減らず、再生される混合酸化物燃料(MOX燃料)は使う計画がない。原発の抱える深刻な問題がはっきりした。

 本紙は、原発を保有する9つの電力会社と日本原子力発電(原電)に、各原発のプールの空き容量のほか、1年(通常、原発の定期検査の間隔は13カ月)ごとの核燃料交換の実績値を取材。そのデータから、各プールがあと何年で満杯になるかを計算した。

 これまでプールの空き容量は3割強あり、当面は何とかなるとされてきたが、個別に見ると状況はもっと厳しかった。
 東京電力の福島第一5、6号機(福島県)や柏崎刈羽6、7号機(新潟県)は既にほぼ満杯。同社と原電は共同出資して青森県むつ市に中間貯蔵施設を建設中だが、まだ完成していない。仮に完成しても、6年ほどでいっぱいになる。 

 中部電力浜岡3、4号機(静岡県)、関西電力美浜1、2号機、大飯1、2号機、高浜1、2号機(いずれも福井県)などは13年分の空き容量しかない。新しい号機のプールは比較的余裕があるものの、ほかの号機の使用済み核燃料を受け入れると5年前後で満杯になってしまう状況だった。

 東電と原電以外は、再処理工場(青森県6ケ所村)の貯蔵プールを活用したいところだが、既に97%以上が埋まっている。中間貯蔵施設を新設することも考えられるが、むつ市の事例も計画からほぼ完成まで12年を要しており、とても各原発の厳しい状況には間に合わない。

 12年分以上の残り容量があるのは、北海道電力泊3号機(北海道)、四国電力伊方3号機(愛媛県)、九州電力川内1号機(鹿児島県)の3基だけだった。 

<使用済み核燃料> 原発は定期検査ごとに原子炉内の核燃料をすべて取り出し、4分の1から3分の1程度を交換し、再び炉に戻される。交換作業が問題なく進むよう、使用済み核燃料プールには1炉心分強の空きスペースが必要とされる。使用済み核燃料といっても長期間、放射線と熱を発し続けるため、貯蔵プールでの継続的な冷却が欠かせない。





核のごみ 地中廃棄「白紙に」 学術会議 原子力委へ提言
東京新聞 2012911 

 地中深くで最終処分するとしながら、原発で使った核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の行き先は一向に決まらない。打開策を検討していた日本学術会議(会長・大西隆東大大学院教授)は11日、地中深くに埋める国の最終処分計画は安全とは言えないとし、処分に関する政策の白紙見直しを求める提言をまとめ、原子力委員会に提出した。

 使用済み核燃料を再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物は、毎時1500シーベルト(150万ミリシーベルト)と人がわずか20秒で死に至る放射線を放つ。国は2000年、廃棄物をガラスで固め、地下300メートル以上の地層に埋める「地層処分」とするよう関連法で決めたが、処分地は白紙のままだ。

 今回の提言は、原子力委から打開の糸口を見つけてほしいと要請された学術会議が、原子力工学や地質学、歴史、社会、経済など各分野の研究者で検討委をつくり、2年がかりで検討してきた。
 提言は、地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しいと指摘。

 処分場が決まらない理由は、どれくらいの量の核のごみなら受容できるか社会的な合意がないまま、一部の関係者で原発の稼働、そこから出る核のごみの処分といった方針を決定してきたことにあると批判。交付金などのお金で処分地を決めようとする方針は、「かえって問題を深刻化させる」と根源的な問題があると指摘した。その上で、「政策をいったん白紙に戻す覚悟で見直すべきだ」と結論付けた。

 安全な処分方法が見つかるまでの数十~数百年の間は、地中深くではなく、いつでも移送できる形で暫定的に保管するよう提言。保管を担う地域には交付金などで無理やり納得させるのではなく、保管地に政府機能の一部を移転して安全性への信頼を得るべきだと訴えた。
 ただ、提言内容の通り、将来に安全な処分方法が確実に見つかる保証はない上、暫定的に保管といっても、事実上の最終処分になってしまわないか、地域の懸念をなくすのは難しい。提言の実効性には疑問があり、核のごみの根源的な問題点を見せつけた。 (榊原智康)


【社説】  県民投票否決 条例案は重い一石投じた
新潟日報 2013124 

 原発の再稼働問題に重い一石を投じた提案だったといえよう。だが、議会は「ノー」の答えを示した。
 県議会は23日の本会議で、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を自民党、民主党などの反対多数で否決した。
 条例の制定は、市民団体「みんなで決める会」が6万8353人の有効署名を集めて直接請求したが、願いは届かなかった。
 同様の条例案は大阪市、東京都、静岡県でも否決されている。
 反対の理由について自民は、国策である原子力行政は県民投票になじまない、高度な専門的知見を要する、などを挙げている。「国策」をとりわけ強調した。
 その国策に翻弄(ほんろう)された福島で、過酷な原発事故が起きた。同じ東電の原発が本県に立地することを受けた議論は十分だったのだろうか。
 原発稼働の判断材料に「県民の民意を取り入れてほしい」という市民団体の訴えは説得力があろう。
 再稼働の可否に関わる国政与党となり、県会の最大会派でもある自民は請求者が納得できる説明が、今後も求められよう
 「国が責任を持って決めること」。こうした主張が根幹にあるのなら、県議会の役割はどこにあるのか。よく考えてほしい。
 本県では1996年、旧巻町の住民投票で東北電力の原発計画が白紙に戻ったことを忘れてはいまい。
 泉田裕彦知事は、条例案に修正を求める意見を付けて議会に提出した。社会民主県民連合らが投票実施時期などを修正する案を出したが、その案も本会議で否決された。
 知事は「県民投票は間接民主主義を補完するものだ」として、「修正して実施すべき」と踏み込んだ。
 にもかかわらず、意見には条例案への課題が列挙された。核燃料サイクル、再稼働しない場合の国による地域振興策など、自治体レベルでは難しいものが並んだ。
 代表質問では、賛否が明確でないと指摘された。知事の姿勢を見定めることができないまま、議論が深まらなかった
 知事は条件付きの賛成だと、市民団体は直接民主主義の実現へ期待を抱いたはずだ。傍聴席は埋まり、県民の関心の高さがうかがえた
 しかし、3日間という議会日程は結論を出すには短い。継続審議という選択肢や、知事自らあらためて原案を修正して提案してはどうかとの意見は検討に値したのではないか
 各会派から多様な発言が出たものの、間接民主主義を補完するという論点が整理されなかったのは残念だ。今後の教訓としたい。
 直接請求の試みは、議員や県民が地域の将来を考える契機を与えた点で大きな意義はあったといえる。
 県や県議会が、県民に向けて広くアンケートを実施するというアイデアも出たという。
 市民団体の今回の問題提起をかみしめ、議会は住民の声をすくい上げるための知恵を絞る必要がある。
 重要課題に対して、民意を直接示す道を閉ざすべきではない。