2013年1月23日水曜日

対米追従路線から脱却すべしと


 本ホームページは書籍の宣伝を目指しているものではありませんが、この度はリベラル・護憲派論客として知られる天木直人氏と、元航空幕僚長で保守路線を貫く田母神俊雄氏が書き上げた一冊の新書本の書評を紹介します。今後の日本の自主防衛策と日本外交が進むべき道を論じたものです。 

 二人の共通点は、アメリカのいいなりである現状から日本は脱却すべきという主張だということです。一部の政党や平和団体などを除き、日本がアメリカに従属している実態については、殆どの文化人、官僚、経済人、マスメディアは決して触れようとしません。それはあたかもタブーであるかの如くにです。

そういう中で反骨の外交官と自衛官が勇気をふるって、歯に衣を着せずに論述した書のなかにこそ、真実があるのではないでしょうか。 

 以下に「新刊JP編集部による『自立する国家へ』の書評を紹介します。

   (註. この記事はホームページ末尾の「平和に関するニュース」の欄に載っていたものです)
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憲法改正、国防軍、日米同盟…安倍政権の覚悟を問う
新刊JP編集部 20130121日配信

昨年1226日に発足した第二次安倍内閣ですが、この内閣で最重要課題の一つに挙げられるのが日米関係です。民主党政権が揺るがせてしまったアメリカとの関係を今後どのような方向に持っていくべきかということに大きな注目が集まっています。

 『自立する国家へ!』(ベスト新書・KKベストセラーズ/刊)は元外交官(駐レバノン特命全権大使)でリベラル・護憲派論客として知られる天木直人氏と、元航空幕僚長で保守路線を貫く田母神俊雄氏が、今後の自主防衛策と日本外交が進むべき道を論じる一冊。言ってみれば右翼と左翼、思想や主張がまったく違う両氏ですが、共通しているのは日本は対米追従路線、つまりアメリカのいいなりである現状から脱却すべきという主張です。
 そこには、反骨の外交官・自衛官としてのキャリアの積み重ねが反映しているのです。 

■戦闘機の国産化を妨げるアメリカ
 自衛官だった田母神氏は防衛庁と自衛隊の対米追従を指摘しています。
 同氏によると、アメリカから購入する装備品の価格はあってないようなもので、日本は世界一高い価格で購入させられているといいます。
 それならわざわざアメリカから買わず、日本の技術力を生かして国内生産すればいいはず。しかし、アメリカはそれを許しておらず、日本の防衛産業の自立をさまたげているばかりか、私たちの税金がアメリカの軍需企業に流れているという現状を作りだしているのです。さらに、兵器やミサイルに組み込まれているシステムソフトまでアメリカに握られていることも指摘しています。氏は、アメリカと日本は親子関係にあり、今まさに、日本の親離れが問われていると主張しています。 

■TPP問題で自国は例外を要求、日本には認めないアメリカ
 防衛だけではありません。天木氏は経済面でのアメリカ追従の危険性を語ります。
 その象徴が参加するかどうかで論争となっているTPP環太平洋戦略的経済連携協定)です。
 TPPは単なる貿易の自由化ではなく、この協定のメンバー間に限った自由化であり、メンバー外の国との間に差別が生じます。これは、戦後の自由貿易体制であるGATTWTOの原則「無差別の貿易自由化」と衝突します。

 本来、貿易自由化を進めるならばGATTWTO体制の下で行うのが筋であるはずです。それでもアメリカが日本にTPP参加を迫るのは、アメリカの目的が単に貿易の自由化だけでなく、市場の開放をはじめとしたよりアメリカに都合のいい社会構造への変革を日本に強いているとも言えます。
 天木氏はこの他にも、元外交官の立場からアメリカの横暴さや狡猾さに言及していきます。 

■憲法改正、集団的自衛権行使を可能に…では安倍政権は失敗する
 防衛・経済をはじめとした様々な分野でアメリカのいいなりになってきた日本ですが、安倍政権では憲法第9条を変え、集団的自衛権の行使を可能にして軍事的にアメリカと対等になろうとしています。自衛隊にかわる国防軍の創設も憲法改正草案に掲げています。

 しかし、天木さんはこの方法を、「アメリカの本質を知らない独りよがりの考え」として、軍事的に強くなることではなく、まずは不平等な内容である日米同盟(安保条約)と決別するべきだと言います。
 そもそも、アメリカが自国と軍事的に対等な国を認めるはずがありませんし、アメリカは日本を対等に見てはいないのです。その証拠として、天木さんはケビン・メア元アメリカ沖縄総領事が『決断できない日本』(文藝春秋/刊)に書いた「日本が日米同盟を本当に重要と思うなら、なぜ沖縄人や日本国民に負担をがまんしろといわないのか、日米同盟を重視する態度が見えない」という一文を取り上げています。
 まだまだアメリカに対する従属度が足りない。これがアメリカの本音なのです。 

 本書には、元・外交官・自衛官だからこそ知りえた日本の対米政策のずさんさや矛盾が、これまで日本国民に明かされてこなかった事実の数々と共に綴られています。

 新政権発足で注目される日本の対米政策ですが、歯に衣着せぬ二人の意見を読むと、マスコミが当然のように報道している“同盟国”“友人”といった日米関係だけでなく、真の関係性が見えてくるはずです。アメリカが日本を「友達」だと思っていない証拠や、安倍首相の訪米(オバマ会談)の調整が難行している舞台裏も読み取れるはずです。