2012年11月17日土曜日

大飯原発敷地内の断層も動いた疑いがあると




 規制委による先の大飯原発の活断層調査では、結局 活断層有無の判定を持ち越しましたが、東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)らは、大飯原発の近くにある三つの活断層がほぼつながっていて連動する可能性がある、原発周辺の地形はそれらの断層の活動で隆起し、そのとき敷地内の断層も同時に動いた疑いがある、との調査結果をまとめ、17日に開かれる日本活断層学会で発表するということです。
 
それとは別に岩手日報は、大飯原発地下の活断層の有無に関して、「かなり濃いグレー」の状況にありながら運転を継続するのは疑問であるとする、論説を発表しました。 
 
以下に福井新聞と岩手日報の記事を紹介します。
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大飯原発近くの3断層ほぼつながる  連動可能性、敷地内も動いた疑い
福井新聞 20121116
 
 関西電力大飯原発(福井県おおい町)の近くにある三つの活断層がほぼつながっており、連動する可能性があるとの調査結果を東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)らが15日までにまとめた。原発周辺の地形はこれらの断層の活動で隆起したとみられ、原発敷地内の断層も同時に動いた疑いがあるという。
 
 京都府宇治市で17日に開かれる日本活断層学会で発表する。
 
 つながっている可能性があるのは、大飯原発北西沖の海域にある2断層と、東側陸域の「熊川断層」。海の2断層は連動するが、旧原子力安全・保安院は関電による調査結果を根拠に、熊川断層とは「連動しない」と評価。仮に3断層が連動しても、計算上は大飯原発の安全性に問題はないとしている。
 渡辺教授と中田高・広島大名誉教授(変動地形学)は今年夏、大飯原発が面する小浜湾で音波探査を実施。熊川断層の延長線上の海底で、深さ約10メートルにある1万年前以降の地層が断層活動で変形しているのを確認した。
 
 さらに、航空写真などによる地形の分析で、音波探査を実施した場所のすぐ近くにある岬に断層のずれで生じた地形があることも分かった。
 これらは全て熊川断層と海の2断層の間の“空白地”で見つかったことなどから、渡辺教授は「3断層が連続する可能性が高い」としている。
 また、3断層と西側の大飯原発の間は断層活動で隆起し、大飯原発周辺でも断層寄りの東側だけに隆起の痕跡地形が見つかっている。
 
 原子力規制委員会が活断層かどうかを調査中の敷地内にある「F-6断層」との関連について、現地調査団メンバーの渡辺教授は「広域的にみて、3断層の活動によって隆起した地域に含まれており、連動したと考えるべきだ」と指摘している。 

原発の断層調査 不安抱えた稼働は疑問
岩手日報 20121116
 
 原子力行政の信頼回復を担って9月に発足した原子力規制委員会は、早くもその体制や姿勢が問われる事態となっている。
 
 一つは、原発事故発生時の放射性物質拡散予測で訂正が相次いだことだ。もう一つは、関西電力大飯原発(福井県)の活断層の判断が留保されたことだ。
 原発事故は、地域をはじめ国全体に致命的な被害を与えかねない。原子力委員会の安全規制の使命は極めて重い。しかし、これまでの対応は、信頼感を薄れさせている。チェック機能の強化、稼働の是非に対する確たる方向性が求められる。
 拡散予測の訂正は、ずさんとしか言いようがない。まず、6原発の拡散方向に誤りがあった。気象データの処理を請け負った独立行政法人・原子力安全基盤機構が変換ミスした。さらに、九州電力管内の2原発で拡散方位が真逆だったことが判明した。九電がデータを間違って規制委に伝えたためだった。
 
 問題の根本にあるのは、丸投げしたままチェックできなかったり、電力会社の言い分をうのみにする姿勢だ。事務局の原子力規制庁次長の「自ら検証できる体制がない」の言葉は悲しすぎる。
 予測に対する信頼が揺らいでいる中、新たな拡散予測を実施する考えが示された。混乱を増幅させることのないよう十分に留意してほしい。
 
 国内で唯一運転している大飯原発の断層をめぐる評価会合では、活断層かどうか専門家の意見が分かれ、新たな試掘溝を掘るなどさらに調査を進めることとなった。
 
 田中俊一委員長は14日、「活断層か地滑りかはっきりしないと(運転可否の)判断は無理だ。理由なく原発を止める権限はない」と述べた。しかし、9月には「黒か濃いグレー」なら運転停止を求める-としていたはずだ。
 評価会合の議論から見ると、かなり濃いグレーに思われる。専門家の意見が一致するのが難しいとすれば、どの立場を取るのかが問われる。危険性を重視するなら、停止しての追加調査が望ましい。
 断層調査は日本原子力発電敦賀原発(福井県)でも予定され、来月1~2日に調査団が派遣される。さらに東北電力東通原発(青森県)にも年内に派遣する方針だ。
 
 東京電力福島第1原発事故の教訓は「想定外」の事態が起こりうることだった。原発は、直下で地面がずれることをほとんど想定せずに建てられている。活断層が再びずれれば、極めて深刻な事故がもたらされる。
 不安なままでの運転継続や再開には慎重にも慎重を期すべきだろう。規制委は決然とした姿勢を取ってほしい。