2017年6月27日火曜日

ミスター共産党が見た安倍政権 「歴代自民政治をも否定」

 日刊ゲンダイが「ミスター共産党」と呼ばれている不破哲三氏のインタビュー記事を掲載しました。インタビューは16日の共謀罪成立前に行われたものだということです。

 不破氏の語り口は
 今の安倍政権は、財界密着、対米従属の基本路線に戦前回帰というウルトラ右翼の思想が加わったもので、その右翼ぶりは歴代自民党政治をすら否定している。
 安倍首相は選挙で大勝したと言うが実はそうではなく、自民党の得票率は60年代末から90年代初めまで、40%台を割ったことはなかったのに、今の自民党は291議席を獲得した14年12月の総選挙でも、比例得票率は33%で「架空の多数」にすぎない。
 国家戦略特区の件で、「たまたま腹心の友が事業選定者に決まったけれど、俺は知らない」というのは政治の世界では通用しない。憲法改正をめぐる新聞発表も私物化の例といっていい。
などと極めて端的で明瞭です。
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注目の人 直撃インタビュー  
ミスター共産党が見た安倍政権 「歴代自民政治をも否定」
日刊ゲンダイ 2017年6月26日
 安倍政権ほど国会審議を軽視し、議会制民主主義を冒涜した歴代政権はないだろう。森友、加計問題をめぐる数々の疑惑には一切答えず、国民の多くが反対の声を上げていた「共謀罪法案」に至っては、委員会審議を途中で打ち切って本会議で採決(中間報告)という「禁じ手」で強行成立させてしまった。傲慢な独裁政権の姿は、国政に半世紀近くにわたって関わってきた「ミスター共産党」こと、日本共産党中央委員会・常任幹部会委員の不破哲三氏の目にどう映っているのか。(インタビューは16日の共謀罪成立前

――今の安倍政権をどう捉えていますか。
 自民党は結党来、財界密着、対米従属を基本路線としてきたわけですが、安倍政治というのは、これに戦前回帰というウルトラ右翼の思想が加わった。これが最大の特徴だと思います。

――歴代政権と比べて戦前回帰の志向が強い政権ということですか。
 例えば、先の大戦について、日本の侵略戦争を認めず、「後世の歴史家の判断に任せる」と逃げていた田中角栄元首相でさえ、さすがに戦前を美化することはありませんでした。拓殖大学総長時代の中曽根康弘さんは、戦前回帰を肯定する言動が目立っていましたが、総理大臣就任後は「日本は外国から侵略戦争という強い批判を受けていることを心に留める必要がある」と答えるにとどめていました。自民党総裁といえども、首相となれば皆、国内外情勢を鑑みて踏み込んだ発言を避けてきたわけです。ところが、安倍政権は違う。閣僚が侵略戦争を美化する発言をしたり、教育勅語を肯定する答弁書を閣議決定したり。世界が警戒することを平気でする。安倍政治というのは歴代自民党政治をすら否定しているのです。

――安倍政権の傲慢さが目立つ理由として「1強多弱」の政治情勢が指摘されています。
 安倍首相は選挙で大勝した――と言っていますが、実はそうではない。自民党の得票率は60年代末から90年代初めまで、40%台を割ったことはありませんでした。私が初当選した69年12月の自民党の得票率は47・6%で、共産党が39議席を得て「躍進」といわれた72年12月も46・9%。しかし、今の自民党は291の議席を獲得した14年12月の総選挙でも、比例得票率は33%。一方の野党4党は計34%で、本当は野党が上回っていたのです。つまり、今の自民党勢力というのは「架空の多数」にすぎないのです。

――小選挙区制がつくりだした「架空の多数」で好き勝手やっている。
 やりたい放題のために、それに加えて特定秘密保護法と内閣人事局という“仕掛け”をつくりました。特定秘密保護法については、国民の多くが「特定秘密というのだから、よほどの極秘事項」と思っていたでしょう。しかし、施行後、国に情報公開請求すると、開示される資料は「黒塗り弁当」ばかりになりました。文書の見出しも真っ黒で、何も分かりません。そして、各省庁幹部の人事権を握る内閣人事局によって絶対服従体制を敷いた。これでは、外部から政権チェックするのは容易ではなく、それをいいことに目に余ることを毎日のようにやっている。国家の私物化、政治の私物化をしているといっていい。

安倍首相の加憲案は日本会議の提案

――国家戦略特区諮問会議(議長・安倍首相)をめぐる加計学園問題でも「私物化」の批判が噴出しました。
 国益を真剣に考え、本当に悪い岩盤規制であれば、突破しなければならないケースはあり得るでしょう。しかし、それでも総理関係者が関与しないように最大限の注意を払うのは当たり前。たまたま「腹心の友」が事業選定者に決まったけれど、俺は知らない――というのは政治の世界では通用しません。森友、加計問題は安倍首相の政治の私物化が露骨に表れた例ですが、憲法改正をめぐる新聞発表も私物化の例といっていいでしょう。

――5月3日の読売新聞で公表した9条をめぐる改憲宣言ですね。
 あの中身はよくよく調べると、日本会議の関係者が昨秋の機関誌(「明日への選択」)で提唱した内容です。例えば、日本会議の政策委員で、第1次安倍政権から安倍首相のブレーンを務める伊藤哲夫・日本政策研究センター代表は16年9月号で〈憲法第九条に三項を加え、『但し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない』といった規定を入れること〉と加憲方式への戦略転換を提案し、続いて、同じ研究センターの小坂実研究部長は11月号で、この方式で憲法9条を「空文化させるべき」だと主張しました。安倍首相の「加憲」案は、日本会議派のこの提案をそのまま取り入れたもので、しかもその提案を5月3日の日本会議派の集会に、その提案通りに「やります」と報告した。それも党に一切相談することなく、「党と政府の方針」とした。これは公党と国政の完全な私物化です。

――安倍政権では閣僚の劣化も目立ちます。特に共謀罪法案をめぐる金田法相の国会答弁は酷いものでした。
 安倍政権の閣僚の顔ぶれは、国政をうまくかじ取りしようと考えられた人事とは思えません。共謀罪法案についても、本気で成立させたいのであれば、少しでも法律に明るい人を法相に据えるのが当然です。しかし、ほとんど法案の中身を理解していない人を大臣に任命した。おそらく30時間という審議時間が過ぎれば、数の力で押し切れるという発想が背景にあったのでしょうが、政治感覚を疑います。

――共謀罪法案では、国連人権理事会の特別報告者も懸念を示していました。
 共謀罪は国民の人権、プライバシー権に対する安全装置が何もなく、政府の監視機能、警察機能を強化するだけだという警告。特別報告者の報告書は現地調査を踏まえた、非常によくまとまった内容です。国際社会からみて、今の日本が極めて危険な国になっていると判断したため、緊急の質問状を日本政府に出したのです。ところが、日本政府は報告書を否定した上、特別報告者も非難した。これは日本の民主主義に違反しているだけではなく、国際社会のルールを踏みにじる行為です。

■対北朝鮮では外交努力を尽くすべき

――国際社会における日本という視点では、北朝鮮に対する強硬姿勢も最近、際立っています。
 北朝鮮のミサイル発射問題をめぐり、武力衝突が起きないよう国連の閣僚級会合で「対話」の道が模索されていた中、「核ミサイル計画を止めない限り、対話はあり得ない」と言っていたのは日本の岸田外相だけ。安倍政権の外交姿勢というのは軍事的対抗措置を強めることしか頭にない。世界で最も軍事的脅威をあおっているのです。

――これまでの日本政府の対応とかなり違う。
 98年1月、北朝鮮と日本の間で「軍事的対応の悪循環」ともいうべき危険な事態が拡大したことがありました。その時、私は国会で「交渉ルートを持たないまま対立関係だけが先行するのは危険だ」として、正式の対話と交渉のルートを確立する努力の重要性を訴えました。それが契機になって、村山富市さん(元首相)を団長にして政党代表団〈村山訪朝団〉をつくり、共産党も参加して初めて北朝鮮との交渉に道を開きました。双方の疑心暗鬼が深まれば、実験が演習となり、やがて戦争に至る。そうならないように外交努力を尽くすべきです。ところが安倍政治は、危機をあおることが政権の存在感を示し、右翼路線を国民に浸透させる手段だと信じ切っているのです。

■戦後史上、初の野党共闘は今後も力になる

――安倍政権の暴走を止めるには、やはり野党共闘が必要ですね。
 昨夏の参院選で実現した野党共闘は、日本の戦後史上、初めてです。それも、市民の声が政党を突き動かした。これはすごい財産です。「安倍1強」という異常な政治体制が、戦前回帰のウルトラ右翼を生み出す一方で、市民と野党の結集を促した。この動きは今後も大きな力になるのは間違いありません。
(聞き手=本紙・遠山嘉之)

  ▽ふわ・てつぞう 1930年、東京生まれ。87歳。東大物理学科卒。47年に日本共産党に入党し、53年に鉄鋼労連書記局勤務、64年以後、党本部勤務。70年、党書記局長になり、党幹部委員長、中央委員会議長を歴任。69年の総選挙で東京6区で初当選、2003年の議員引退まで連続11回当選。佐藤栄作首相をはじめ計17人の歴代首相と論戦した。

英とも米とも違う日本の「政治主導」(田中良紹氏)

 森友学園疑惑では、財務省の佐川宣寿理財局長が野党の追及の矢面に立ちましたが、彼は安倍首相が関与したとは口が裂けても言わずに、他のルートでリークされた情報に基づいて野党議員が問いただしても、
 「関係資料は存在しない」、「関係資料はすべて破棄した」、「パソコン内のファイルは定期的にクリアされ復元が出来ないようになっている」として応じずに、「それなら関係者に確認したらどうか」と迫られても
 「私どもで改めて確認することを控えさせていただきたい」、「確認することを控えさせていただきたいと申し上げました」、「確認することを控えさせていただきたいとご答弁申し上げました」を連発し、調査することをあからさまに拒絶しました。

 彼がそんな理不尽、不条理、茶番劇に類することを衆人環視の中で恥ずかしげもなくできたのには、明確な動機がありました。それは「自分が安倍首相を守りきる(ところを官邸に見せる)」という一点です。
 事実 彼の鉄壁のガードは官邸に高く評価され、7月の人事では目出度く国税庁長官に栄転するということです。
 トップに近い官僚たちがこんな風になりふり構わずにまた国会や国民を冒涜することなどに何のためらいもなく、「ウソ八百」を並べ立てて政権に忠誠を尽くすという、この腐敗しきった構造は一体どこに由来するのでしょうか。

 政治ジャーナリストの田中良紹氏がTHE PAGEに「英とも米とも違う日本の『政治主導』・・・」なる記事を載せました。
 田中氏は、安倍首相が構築した「政治主導」は英・米とも異なるもので、普段は国民の目に晒されないままに一方的に忍従を強いられている官僚たちにたまっている不満のマグマは大きく、もしも支持率が下がり続け、選挙の一つでも負ければ、そのマグマは予想もつかぬところからあふれ出す可能性があると述べています。
 以下に紹介します。

(追記 いま行われている都議選で自民が惨敗するのは必至で、メディアは例によってそれを報道しないものの、官邸はそれを正確につかんでいるということです。
    安倍首相が私邸にこもって都議選の応援に出ないのは、加計学園問題での風当たりが強いこともありますが、応援したのに惨敗したということになると自分の面目にかかわる・・・というのが本当のところと見られています。本来そんなわがままは許されないのですが、そこは「お子様版・・・」である以上 党としても耐えるしかないということなのでしょう。
 代わりに引っ張り出されている石破氏こそ「いい面の皮」です。^○^)
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英とも米とも違う日本の「政治主導」 旧民主党と変わらない安倍政権
田中良紹  THE PAGE  2017.06.25
 「森友学園」と「加計学園」の2つの疑惑で共通して追及されたのは「官僚による忖度」でした。その背景の一つとして挙げられたのが2014年に設置された「内閣人事局」。小泉政権以降の自民党政権、旧民主党政権を通じて同趣旨の組織が構想され、2014年の第二次安倍内閣で設置されました。幹部公務員人事に内閣が関与することで「政治主導」を進めるための改革でしたが、これをどう見るか。政治ジャーナリストの田中良紹氏に寄稿してもらいました

官僚が忖度した?「森友学園」問題
[写真]通常国会閉幕を受けて会見した安倍晋三首相(ロイター/アフロ)
 「既得権益とつるんだ霞が関の岩盤規制を自らがドリルになって穴を開ける」。安倍首相はそれが「政治主導」だと言って胸を張る。日本社会を停滞させる霞が関の官僚機構の旧弊を打破するのが政治の仕事だと言う。しかしそれを言うなら間違っても自分の「お友達」に利益誘導してはならない。
 仮に「お友達」の事業が最上の評価に値するものであれば、くれぐれも誤解を招かぬよう規制撤廃に至る過程をすべて明らかにする必要がある。そうでなければ「政治主導」の正当性は失われ権力者の資質に疑問符が付く。

 「公」の使命のためには「私」の利益は捨てる。「お友達」には涙をのんでもらうのが権力者の矜持と思うが、安倍首相にはそれが分からないようだ。第一次政権では「お友達」を閣内に集めて批判され、第二次政権では「お友達」に利益誘導を行ったのではと批判にさらされている。
 通常国会は統治構造の歪みを露呈する異常な国会であった。安倍首相の妻が名誉校長を務めた「森友学園」が8億円の値引きで国有地を払い下げられ、それが追及されると財務省は交渉記録をすべて破棄したと発表した。霞が関を知る者ならありえない話で、不都合だから隠蔽したとしか思えない。
 払い下げ交渉には経産省出身の首相夫人付き秘書官の関与も明らかにされたが、安倍首相は「妻も自分も事務所も一切関わってはいない」と全面否定を繰り返し、現場の官僚が勝手に「忖度」したとの「印象」を国民に振りまいた

英国と米国の幹部公務員「政治任用」のあり方
 なぜ官僚が勝手に「忖度」するのか。そこで指摘されたのが2014年に内閣官房に設置された「内閣人事局」の存在である。そもそも首相は行政府の大臣、副大臣、政務官など政治家の任命は行うが、事務方の公務員人事は霞が関の役所に委ねられていた。
 ところが米国を真似し「小さな政府」を主導した小泉政権の頃から、霞が関の抵抗を排除するには公務員の人事を政治が握らなければならないとの議論が起こり、役所の幹部人事に政治が介入する仕組みの検討が始められた。

 おそらく米国の仕組みを念頭に置いたものと私は思ったが、米国では政権が交代するたびに4000人を超える幹部公務員が交代する。その人事権は大統領にあるが、しかし議会の承認も必要とされる。それが幹部公務員の人事を政治がコントロールする米国の政治任用制である。
 一方、日本と同じ議院内閣制の英国では、多数の与党政治家が大臣、副大臣、政務次官、政務秘書官となって行政府に入り込む。さらに大臣への助言者を外部から登用するところまでが政治任用で、事務次官以下の職業公務員は試験によって登用される。公務員は厳しく政治的中立を求められ、一方で政治が公務員人事に介入することは自制される。
 大統領制でない日本が米国の仕組みを真似することは現実的でない。しかし英国型とも異なる「内閣人事局」を安倍政権が誕生させ、官邸は各省の幹部人事を掌握した。人事権を握られた役所は官邸の意向に逆らえなくなる。安倍政権の意向に逆らい、更迭されたケースが複数の官庁で現実になったからだ。

 従って官僚は「総理のご意向」を「忖度」しながら働かざるを得ない。首相夫人が名誉校長を務めた「森友学園」の前理事長が国有地払い下げに苦心したが、首相夫人にお願いをしたら「神風」が吹き、官僚機構が一斉に「総理のご意向」の方向に動いたと言った。

「加計学園」問題では経産省主導への不満
 次に問題とされたのは、首相の親友が経営する「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題である。「総理のご意向」が内閣府を経由して許認可権を持つ文科省に向けられた。しかしこちらは文科省の内部から反発が出た。
 藩の命令に唯々諾々と従わず町人や農民が中心の「奇兵隊」を組織してクーデターを起こした幕末の長州藩士高杉晋作を尊敬する前川前事務次官が安倍首相の「政治主導」に真っ向から戦いを挑んだのである。

 第一次安倍政権の失敗は、霞が関と米国から冷たくされたことである。渡辺喜美行革担当相による「霞が関改革」は官僚機構の反発を買って骨抜きにされ、また米国のブッシュ政権は小泉時代のような信頼感を安倍政権に持たなかった。
 そのトラウマが第二次政権で安倍総理を霞が関と米国にすり寄らせる。政権運営のキーマンとなったのは今井尚哉首相首席秘書官である。経産省出身の今井氏は、霞が関の筆頭官庁であった財務省に替わり経産省主導で安倍政権のシナリオを書き始めた。
 それが原発再稼働と原発輸出路線となり、財務省が望む消費増税を延期させ、北方領土交渉では外務省を押し切り日ロ共同経済活動を促す。また首相夫人の秘書官に自分の部下を配置して首相夫妻を喜ばせ、さらに米国の要求に応えた集団的自衛権行使容認の下工作や米国に気に入られるための議会演説草稿を書いた

 今井秘書官の働きに加え「内閣人事局」による人事権の掌握は、安倍政権の官僚支配を盤石にしたように見えた。そうなれば安倍政権はおのずと官僚に上から目線の対応になる。それが財務省にも、外務省にも不満のマグマを充満させる。

官僚を「戦う相手」とみなした旧民主党政権
 前川前次官の座右の銘ではないが、今や霞が関は「面従腹背」の塊になった。支持率が下がり続け、選挙の一つでも負ければ不満のマグマは予想もつかぬところからあふれ出す可能性がある
 この状況は2009年に政権交代を果たした後の旧民主党政権とよく似ている。あの時、国民の熱狂的な支持に舞い上がった旧民主党は霞が関と戦うことが「改革」だと思い込み、小沢一郎氏が英国を真似て与党議員の多数を官僚機構に参加させようと提案したのを一顧だにせず、官僚を公開の場に呼んで追及する「事業仕分け」によって国民の喝さいを浴びようとした。
 私にはそれが官僚に対する「公開処刑」のように見え、政権運営はうまくいかなくなるだろうと思ったが、果たして官僚機構は動かなくなり、旧民主党は政権運営に行き詰まった。官僚は使いこなすべき相手であって戦うべき相手ではない。それを勘違いした旧民主党が権力を失うのは当然であった

 戦前の日本政治は薩長藩閥政府と政党政治の戦いの連続で、天皇の威光を背にした官僚が常に政治より優位にあった。戦後は占領軍が政治家を公職追放する一方で官僚機構を日本支配の道具として残し、片山哲と鳩山一郎、石橋湛山以外は吉田茂、芦田均、岸信介、池田勇人、佐藤栄作と官僚出身の政治家が相次いで首相になった。
 そうした伝統を覆したのは田中角栄元首相である。学歴のない田中はしかし霞が関の官僚たちから一目も二目も置かれた。それは旧民主党や安倍首相のように官僚と戦ったからではない。いわんや金で官僚を買収したわけでもない。官僚に自由に仕事をさせ、その代わり責任はすべて自分がとると宣言したからである。
 そのうえ自分で法律を作った。直接間接に関わった議員立法の数は100本を超え、誰も田中を抜くことは出来ない。それとは逆に立法を霞が関の官僚に丸投げし、そのくせ情報を官僚に頼り切り、しかも「政治主導」だと言って威張る政治家を官僚が評価するはずがない

 米国は幹部公務員の人事を大統領が行うが、議会も人事に関与し、国民に見える形で官僚の資質が判断される。英国は政治家が官僚機構に入り込むが事務の公務員人事に政治は介入しない。しかし日本の「内閣人事局」という制度はまるで官邸の独裁を可能にする。それが今国会で見えるようになった。しかしこれではこの国の政治がまともになるはずがない

■田中良紹(たなか・よしつぐ) ジャーナリスト。TBSでドキュメンタリー・ディレクターや放送記者を務め、ロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材する。1990年に米国の政治専門 チャンネルC-SPANの配給権を取得してTBSを退職、(株)シー・ネットを設立する。米国議会情報を基にテレビ番組を制作する一方、日本の国会に委員会審議の映像公開を提案、98年からCSで「国会テレビ」を放送する。現在は「田中塾」で政治の読み方を講義。またブログ「国会探検」や「フーテン老人世直し録」をヤフーに執筆中

27- 「共謀罪」の速やかな廃止を求める札幌弁護士会会長声明

 札幌弁護士会会長が23日付けで「いわゆる『共謀罪』の制定に抗議し、速やかな廃止を求める会長声明」を出しました。
 ブログ:「弁護士 猪野 」(猪野 氏は札幌弁護士会所属)より転載させていただきます。
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いわゆる「共謀罪」の制定に抗議し、速やかな廃止を求める会長声明

 6月15日、参議院本会議において、いわゆる「共謀罪法案」が強行採決され、「共謀罪」が制定されました。

 当会は、この法案の問題点について繰り返し指摘し、「共謀罪」の制定に強く反対してきました。また、日弁連や全国の弁護士会連合会、弁護士会が同様に反対を表明してきたほか、日本ペンクラブ、労働組合などの多くの団体、個人が、相次いで「共謀罪」は表現の自由やプライバシーの権利を侵害する旨の警告を発し、制定に反対しました。国際的にも、国際ペンクラブが同様の警告を発したほか、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明しています。内外からの批判、反対表明や懸念・警告は、枚挙にいとまがありません。

 ここまで多方面から強い反対や批判・懸念が示されたのは、主体とされる「組織的犯罪集団」や、行為とされる「計画」「準備行為」の概念が曖昧であることが大きな理由です。さらに、政府は法案の目的を「テロ対策」と強弁していますが、対象となる犯罪は277にも及び、テロとはおよそ無関係な犯罪も多数含まれていることも大きな理由です。かかる曖昧さや広汎さからすると、仲間と話をする、ATM機で預金を引き出す、等々、外形的には日常行為と何ら変わりない行為が対象となりうることになり、これではどのような行為が「共謀罪」に該当するのか、「共謀罪」と疑われてしまうのかはっきりせず、市民を萎縮させてしまう効果は計り知れません。「共謀罪」が思想・信条の自由(憲法第19条)や信教の自由(同第20条)、結社の自由・表現の自由(同第21条1項)等を侵害する危険が極めて高いといわれるゆえんです。

 この点、法務省のホームページには「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪を共謀した場合に限って成立する」としています。しかし、たとえば国会審議の過程において法務大臣が「一般人は捜査の対象にならない」と述べていたにもかかわらず、盛山正仁法務副大臣は一般人が捜査対象となる可能性を認めるなど、政府答弁は二転三転してきました。このように、あまりに基本的な疑問や不安についてすら満足な説明ができず、むしろ説明すればするほど矛盾が生じてきたことを私たちは目の当たりにしてきました。国会審理が進むにつれ、法案に反対の世論が増えてきたのは、当然のことと言えましょう。

 このように、国内外からさまざまな批判や懸念があるにもかかわらず、これらを解消する法案修正を行う、あるいは、納得いくまで説明を尽くす等の努力を放棄し、衆議院では法務委員会で強行採決が行われ、参議院では、あろうことか「中間報告」という異例の手段を用いて法務委員会の議決すら経ず、本会議で強行採決が行われました。度重なる数の暴挙は、もはや議会制民主主義を破壊するものというほかありません。

 当会は、かかる暴挙に強く抗議するとともに、「共謀罪」の速やかな廃止を求め、また議会制民主主義の回復に向けて、今後も全力で取り組んでいきます。
2017年(平成29年)6月23日
札幌弁護士会    
会長 大 川 哲 也

2017年6月26日月曜日

獣医学部の全国展開宣言!の超愚行(詳報)

 既報のように、安倍首相は自分の地位を利用して加計学園に便宜供与をしたことが国民に見透かされると、24日の神戸市における講演で自分の不正を糊塗しようとして、「速やかに獣医学部新設の全国展開を図りたい」と述べました
※ 6月25日 首相が秋の臨時国会に自民改憲案を提出すると 加計でも虚偽の転針
 しかしそもそも獣医師数は全体としてはバランスしていて、唯一公務員の獣医師が不足しているのは待遇の不良が原因であるといわれています。
 それを今治市に開設する加計学園の獣医学部では1学年の定員を何と160人(現行の全国の獣医学部の定員総数の2割)にした上に、さらに今後全国展開するというのですからもはや「乱心」の沙汰です。ここまで獣医師問題についての認識に欠ける政治家というのも珍しく、自分が陥っている窮地から逃れるためにそんな無茶苦茶な政策を進めようとするのは、そのまま首相失格を証明するものです。

 Literaが、もしも「獣医学部の全国展開」が行われればどんな事態になるのかについて記事を出しました。
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正気か? 安倍首相が加計問題ごまかしのため「獣医学部の全国展開」宣言!
不要な規制緩和でこんなとんでもない事態が
Litera  2017年6月25日
 厚顔無恥とはこのことをいうだろう。安倍首相が24日、神戸のホテルで開かれた「正論」懇話会で講演し、加計疑惑について「プロセスに一点の曇りもない」と全面否定したうえ、なんと、「獣医学部、全国展開!」を宣言した。
1校に限定して特区を認めた中途半端な妥協が、結果として国民的な疑念を招く一因となった」「規制改革推進の立場から、速やかに全国展開を目指す。今治市に限定する必要はない。速やかに全国展開を目指したい。地域に関係なく2校でも3校でも意欲あるところは新設を認める
 よくもまあ、いけしゃあしゃあとこんなことがいえたものである。獣医学部新設を加計学園1校に限定したのは、文科省でもなければ、日本獣医師会でもない。官邸がどこよりも早く加計に絞るよう圧力をかけていたことは、先日、文科省が公開したメールからも明らかになったばかりだ。

 このメールは昨年11月、内閣府から文科省に送られたもので、国家戦略特区諮問会議での獣医学部新設の原案が添付されていたのだが、その「現在、獣医師系養成大学等のない地域において」という文言に、手書きで「広域的に」などと、当時、同じく獣医学部新設に名乗りを上げていた京都産業大学を排除する表現が書き加えられていた。そして、メールの本文には、こう書かれていた。
〈添付PDFの文案(手書き部分)で直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです。〉
 ようするに、安倍首相は「腹心の友」である加計学園に利益誘導するために今治市だけを特区指定しながら、その不正の証拠がどんどん発覚して批判されると、今度は「全国展開」などと言い出したのである。
 その病的な嘘つきぶりには、寒気すら覚えるが、もっとおそろしいのは、安倍首相が自分の不正を覆い隠すために、さらに無茶苦茶な政策を推し進めようとしていることだ。獣医学部の新設を全国展開などしたら、いったいどんなことになるのか、この男は本当にわかっているのか。

●獣医学部新設は感染症対策に役に立たないどころか、逆に障害に
 この間、何度も指摘されてきたことだが、獣医学部新設は「岩盤規制に穴を開ける」必要などまったくない分野だ。なぜなら、獣医師は絶対数として不足していないからだ。
 たとえば、2015年1月9日に行われた国家戦略特区ワーキンググループによるヒアリングの議事要旨を読むと、農水省の消費・安全局畜水産安全管理課長(当時)である藁田純氏が、犬猫の飼育頭数や家畜の飼養頭数を「低下傾向」、飼養戸数も「飼養頭数以上に大きく減少」と説明。その上で「こういう状況を踏まえると、現時点において獣医師の確保が困難になるということは、なかなか想定しにくいのかなと考えております」「今後、需要の点で増加するということが、我々農水省サイドからすると、残念ながら難しい状況かなという感じがします」とはっきり述べている。

 これに対して官邸は、獣医師不足の地域があり、獣医学部はその解消のために必要などと言い張っている、完全にまやかしだ。たしかに畜産が盛んな一部の地方で獣医師が不足しているが(ちなみに新設が認められた愛媛県の2020年度の獣医師確保目標は0人で、不足しているとはいえない)、それは公務員の産業獣医師で、獣医学部の新設でカバーできるような問題ではない。この背景にあるのは、獣医学部出身者の多くがペット病院の獣医師を希望し、産業獣医師を希望するものが少ないという問題だ。
 つまり、地方の産業獣医師や公務員医獣医師の不足を解決するためには、獣医学部の新設などではなく、地方の獣医師の待遇改善などが必要なのだが、安倍政権は産業獣医師の確保とはまったく関係のない、レベルの低いペット医師をどんどん増やす学部新設をやろうとしているのだ。

 これは、安倍首相が特区指定の理由に挙げた「先端ライフサイエンス分野」や「鳥インフルエンザなどの感染症対策」の研究についても同様だ。
 これらの研究は、北海道大学や大阪府立大学など、既存の国立大学で進められ、大きな実績を上げている。ところが、安倍政権はこうした大学には定員増や予算増を認めず、逆にそんな能力のない私立大学の獣医学部をどんどん全国に増やそうというのだ、

●就職できない獣医師の大量発生、法科大学院の二の舞は必至
 念押ししておくが、獣医学部の規制緩和をするというのは、たんに開設を認めるだけでなく、私学助成金や補助金というかたちで、莫大な国民の税金をその新しい学部につぎ込んでいくということなのだ。
 安倍政権の獣医師学部開設全国展開は、産業獣医師の確保や感染症対策研究に役に立たないどころか、逆に必要な分野に予算が回らなくなって、障害になる可能性さえある。
 そして、レベルの低いペット医師希望者だけがどんどん増えて、獣医師は過当競争に。前述したようなペット、家畜の飼育頭数の減少傾向を考えると、獣医学部を卒業しても就職できないという状況が出現するだろう。

 いや、この獣医学部新設展開はそれ以前の段階で破綻するかもしれない。まず、教員がいない、という問題だ。事実、加計学園もまだ教員確保の見通しが立っておらず、不安視されて、学部を新設しても教員が集まらず、間に合わせの教員だらけになる可能性が指摘されているのだ。教員不足の問題は加計学園に限ったことではなく、既存の獣医系学部でも教員の確保には苦労している。日本獣医師会によると文部科学省の認証機関「大学基準協会」が獣医系で定める専任教員数の基準を満たしている獣医系学部は一つもないという。
 現状でも教員の確保が厳しい状況で、いきなり全国の獣医学部で最大の160名という定員設定の加計学園、さらに全国展開などして、はたしてまともな質の獣医師養成教育ができるのだろうか。レベルの低い獣医師どころか、獣医学部は卒業したが獣医師の国家試験に合格できない者が続出し、それこそ法科大学院の二の舞になるのは必至だろう。

 繰り返しておくが、加計1校だろうが、全国展開だろうが、そもそも獣医学部の新設を規制緩和特区の対象にするということ自体がありえない話だった。以上に述べてきたような問題はもちろん、保育、介護など、ほかに規制緩和で活性化すべきことはやまほどあったはずだ。ところが、安倍首相は自分の「腹心の友」に税金を流すために、無理やり、獣医学部を規制緩和対象に入れた。そして、その不正がばれると、今度はそれをごまかすためにさらにひどい全国展開をぶちあげ、獣医師教育と獣医行政をむちゃくちゃなものにしようとしているのだ。

 まさに安倍首相の典型的な詐術的やり口だが、問題なのは、それがたんに自分やお友だちへの利権誘導だけではすまないことだ。それによって、安倍首相は社会を大混乱させようとしている。国民はそのことの危険性をきちんと認識すべきだろう。(編集部)