2024年4月24日水曜日

学術会議は平和の要石/学術会議法人化に異議 総会で批判次々

 岸田政権は昨年12月、学術会議を国の機関から切り離し法人化する方針を決定し、外部者らが学術会議の会員選考や運営に関与する「助言委員会」、大臣が任命する「監事」「評価委員会」などを新設するとして、415日には、同会議の在り方を検討する有識者懇談会に、組織体制と会員選考のワーキンググループを設置し具体的な検討を進めています。
 こうした動きが学術会議「法人」の独立性を担保するものではなく、逆に政府が合理的に干渉できるようにするためのものであるのは明らかです。
 しんぶん赤旗のシリーズ「こんな政治でいいのか」における栗田禎子千葉大教授インタビュー記事と「学術会議法人化に異議 総会で政府方針に批判次々」の記事を紹介します。
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こんな政治でいいのか 私も言いたい 学術会 平和の要石
    千葉大挙教授 前日本学術会議会員 粟田禎子さん
                        しんぶん赤旗 2024年4月21日
 日本学術会議「法人化」の企てが急速に進んでいます。これは2020年秋の「任命拒否」事件以来の、政府による学術会議への介入、学術会議つぶしの動の最終段階です
 「任命拒否」事件直後から、政府は学薯会議の「あり方」自に問題があると言いだしました。そして22年12月に。設置形態は変えないものの国の機関であるからには学術会議は政府と「問題意識を共有」すべきだとし、会員選考等に対しても統制を強める方針を示したのです。しかし学術会議の独立性を侵害するものだとして国内外から批判の声上がり、学術会議も改悪法案提出を思いとどまるよう求める「勧告」を発した(23年4月)結果、政府は法案提出断念に追い込まれました。

 これを受けて政府が出してきたのが今回の「法人化」計画です。今度は一転して「学述会議の独立性の担保が重だ」とし、「そのために国から切り難し法人化する}としているのですが、「財政基盤の多様化」(財界等から資金獲得)を求めると共に、運営や会員選考方針等についても「外部」の目を入れる必要性を強調し、大臣が任命する監事や評価委員会を置くなどむしを介入統制を一層強め、学術会議の活動の自由を奪おうとする意図が鮮明です
 学術会議は1949年、戦前の日本で「学問の自由」が保障されず、学術が軍国主義に奉仕ざせられた反省の上に設立された、日本の科学者の代表機関です。科学が文化国家・平和国家の基礎だとの信念に基づき、国の機関であると時に時の政権からは独立した立場で、行政や産業、国民生活に関する科学的提言を行ってきました。今「学術会議つぷし」の動きが進んでいるのは、このような学術会議の性格が現政権にとって不都合だからだと考えられます。
 「安保法制」制定以来、政府は米国と一体化して戦争できる体制づくりに邁進し、国等と共同の武器開発・武器輸出にも乗り出しています。学術をはじめ社会全体を戦争に動員しようとしており、科学者の独立性を体現する学術会議が邪魔になっているのでしょう。学術会議への攻撃を市民と科学者の共闘ではね返すことは、日本が戦争に向かう流れを食い止める上で重要です   (聞き手 田中佐知子)


学術会議法人化に異議 総会で政府方針に批判次々
                      しんぶん赤旗 2024年4月23日



日本学術会議の第191回総会=22日、東京都港区



 政府が日本学術会議の独立性を損なう法人化を狙うなか、同会議は22日、東京都内で総会を開きました。会員からは、政府案への批判とともに学術会議として積極的に対案を示していくべきだとの訴えが相次ぎました。
 岸田文雄政権は2023年12月、学術会議を国の機関から切り離し法人化する方針を決定。外部者らが学術会議の会員選考や運営に関与する「助言委員会」、大臣が任命する「監事」「評価委員会」などを新設するとしています。今月15日には、同会議の在り方を検討する有識者懇談会に、組織体制と会員選考のワーキンググループを設置し、具体的な検討を進めています
 総会の議論では「政府には法人化の必要性と合理性を明示的に説明する責任があるのに、一切示していない」「学術会議が国の機関であることは、政府が学術の意見に耳を傾ける姿勢をもっていることを国内外に示すものだ」など、法人化への反対意見が次々表明されました。

 学問が国に弾圧された戦前の歴史と、学術会議の会員任命拒否問題に言及した上で、学術会議が法人化された後の日本の将来を危惧する声もあがりました。光石衛会長は、「(政府側で)学術の活動が理解されないまま議論が進んでいる」と指摘。1949年に設立された学術会議の「75年の歴史が途切れる状況に陥りつつある」と危機感を示し、「途切れさせない任務をわれわれは負っている」「ここ3カ月が勝負だ」と述べました。
 同日、学術会議前では、軍学共同反対連絡会が宣伝行動し、政府の狙いは、軍事研究に反対してきた同会議の弱体化だとし、学術会議に市民との対話を求めました。

安保政策に便乗した冤罪 公安警察がでっち上げた大川原化工機事件

 大川原化工機事件では、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を国の許可を得ずに輸出したとして、20年3月に警視庁公安部が横浜市の大川原化工機(株)の社長ら3人を逮捕しましたが、社長らは一貫して無罪を主張したため、11か月間も拘置所に抑留されました
 その後、同乾燥機は生物兵器の製造に転用することは不可能であることが明らかになり、検察が立件を断念したことで3人はようやく解放されました。
 しかしこの間、胃がんが判明しても拘置所内で十分な治療を受けられなかった相談役はその2日後に亡くなりました。また数十回にわたり取り調べを受けた女性職員はうつ病を発症しました。
 警察と司法の暴走でこれだけの悲劇を生みました。決して杜撰な捜査ということだけで片付けられる問題ではありません。
 しんぶん赤旗が社長にインタビューしました。

 被疑者が罪を認めない限り何時までも警察の拘置所に収容して置くといういわゆる「人質司法」は日本特有のもので、新憲法下でも数十年に渡り検察が行っている「世界の非常識」にあたるシステムです。
 直接的には検察がその責めを負うべきですが、数十年来それを放置して来た「司法(裁判所)」もいわば「共同正犯」の立場にあります。
 国連の人権機関はこれまで数次にわたって、中世期のシステムだとして日本に改善を求めて来ましたが、日本の検察は頑として受け入れずに現在に至っています。是正勧告を受け入れるのは検察の名折れだとでも思っているのでしょうか。
 一家の働き手が無期限で拘置所に入れられていては、その家族は生活が出来ません。今回のケースではそれに該当しませんが、これに該当するケースでは、拘置所を出るために無実であっても「自白」するしかなく、これこそ冤罪を生むシステムそのものと言えます。
 冤罪について言えば、日本の刑事事件において有罪率が99・9%というのも極めて異常で、海外の例では70%程度であることを見れば30%が冤罪という推定が成り立ちます。

 「人質司法」が中世の封建制度に匹敵する人権蹂躙のシステムであるのは火を見るよりも明らかなのに、それが人権擁護の府であるべき「司法」において公然と行われているのは異常の極みというべきでしょう。
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安保政策に便乗した冤罪 公安警察がでっち上げた大川原化工機事件
大川原正明社長に聞く
                       しんぶん赤旗 2024年4月22日
 大川原化工機(横浜市都筑区)は2020年3月、軍事転用のおそれがある装置を不正に輸出したとして外為法違反の疑いをかけられ、大川原明社長ら3人が警視庁公安部に逮捕されました。安全保障の名のもとで企業活動に介入、監視する政府の経済安全保障政策に関連づけて作り上げられた事件とみられます。検察官は初公判の直前に起訴を取り消しました。異例の結末になった冤罪事件について、大川原社長聞きました。   (丹田智之)

 公安都のみたては、大川原化工機が輸出した噴霧乾燥機(液体を粉末にする装置)が「あるべきではな’いところで見つかった」というものでした。事実無根の容疑で逮捕、起訴され、警察署や拘置所での身体拘束が約11カ月も続きました。
 公安部が内偵捜査に着手したのは17年5月ごろです。18年10月の強制捜査のあとから一貫して無実を主張してきました。任意の事情聴取は、役員や社員を含めて290回を超えます。初めは「捜査に協力すれば分かってもらえるだろう」と考えていたのです
 ところが公安部は強制捜査後の1年半の間、私たちを遼捕し起訴するために検察官と経済産業省の幹部を説得していました。安保政策関逓への注目に便乗し、世間の話題になる事件に仕立てようとしたのでしょう
 約30年間で300台くらいの噴霧乾燥機を輪出してきましたが、ここ15年くらいは全ての売り先に対して軍事利用しないとの誓約書を提出してもらていますそもそも生物兵器などを製造することが不可能な機器仕様です。ぱく防止対策がされておらず、最低限の除菌・殺菌ができる機能もついていません。

 ー国会では政府が指定する秘密を大幅に増やして民間企業の技術者や研究者を監視、処罰する経済秘密保護法案が審議されています。冤罪の当事者として言いたいことはありますか
 私たちは健全な輸出産業でるべきだと考えています。化学機械を製造する同業者が不当な容疑で逮捕、起訴起訴されることがあってはなりません。
 経済安全保障自体には賛成すが、同法案は、何が安全保障に該当するのかが明確ではないと感じます。「安全保障支障を与えるおそれがあ」という規定が解釈を広げしまう問題もあります。事機密とは違う分野に法規制を拡大しないで欲しいという思いがあります。

人質司法 懲役より酷
 -起訴後の保釈購求を 東京地裁が何度も却下し ました。拘置所で長期の 身体拘束が続くことは 「人質司法」と呼ぱれます。
 警察署内の留置施設では体調管理が難しく、精神的なダメージも大きかった。拘置所でも弁護士などを除いて接見が禁じられ、面会が許されている懲役よりもひどいと感じました。あまりにも理不尽です。察官は「証拠」があるから起訴したはずです。危害を与えることのない人は、そもそも逮捕する必要性もないはずですし、起訴の時点で速やかに保釈するべきだと思います
 基本的に警察官は自分たちに都合がいいことだけを供述調書に記し、都合が悪いことは残しません。そうした行為が常態化しています
 公安部が立件に不利な実験データ″を隠していたことも明らかになりました。公正な捜査とは言えません。
 会社の損害も大きく、周囲から犯罪者と見られることで社員の家族が苦しみました。当初は警察、検察の情報だけが報道されてきたからです。そうしたマスコミの姿勢も間われます

 大川原化工機事件 

 軍事転用が可能な装置を中国と韓国に輸出したとして同社の大川原正明社長
3人が外為法違反で逮捕、起訴された事件。犯罪が成立する事実がなく、2021
年7月に検察官が起訴を取り消しました。同社元顧問の相嶋静夫さんは長期の勾
留で病状が悪化し、保釈もされずに死亡しました。逮捕と起訴は違法だと主張す
る同社側は国と東京都を訴え、昨年12月に東京地裁が損害賠償を命じました。
 この訴訟では、警視庁公安部の捜査員が事件について「ねつ造」と証言しまし
た。

 

衆院3補選への臨み方(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。

 現在の政治勢力は ・自公政権与党勢力、・維新・国民民主など自公補完勢力、・立民の一部、共産、れいわ、社民自公に対峙す革新勢力 の3つのカテゴリーに分けられるとして、主要な政策課題への対応でつの勢力を整理すると
安全保障政策では、自公補完勢力は米国に隷属を基本とするのに対して、自公に対峙する勢力は外交による日本の安全保障確立近隣諸国との平和友好関係の確立に注力する
エネルギー政策では自公補完勢力は原発を全面推進するのに対して、自公に対峙する勢力は原発の廃止を基本方針とする
経済政策では自公補完勢力は市場原理主義を基軸に消費税増税で財源を賄うのに対して、自公に対峙する勢力は国民に保障する最低水準の引き上げに注力し、税制では消費税を抑制し、富裕層と大資本に適正な負担を求める
となり、問題は立憲民主党の立ち位置がぐらついてきたことだと指摘します

 また早晩実施される衆院総選挙立民が、共産、れいわ、社民との野党共闘路線を再構築するなら政権交代の可能性も生まれるのですが、そのためには立民がこれまでの「こうもり」的な対応を克服なくてはならないとしています。

 そして有権者は目先の衆院3補選で、自公を選択するのか、自公補完勢力を選択するのか、自公対峙勢力を選択するのかを判断して投票に臨む必要があると述べています

 我々はトーマス・カーライルの名言「この国民にしてこの政府あり(国民は、自分達と同程度の政府しか持てない)」ことをよくよく肝に銘じるべきです。
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衆院3補選への臨み方
             植草一秀の「知られざる真実」 2024年4月23日
現在の日本政治では政治勢力が三つのカテゴリーに分類される
第一のカテゴリーは自公
政権与党勢力
第二のカテゴリーは維新・国民民主など。
新設された諸派勢力の多くもこのカテゴリーに分類される。
自公補完勢力
第三のカテゴリーは立憲民主の一部、共産、れいわ、社民
自公に対峙する改革=革新勢力

主権者はこのカテゴリーを認識した上で投票行動を決定する必要がある。
主要な政策課題への対応で三つの勢力を整理すると次のようになる。

安全保障政策
自公と自公補完勢力は米国に隷属するスタンスを基本とする。
米国の命令に隷従し、米国の命令に従い軍事費を増大し、米国から高額軍事装備品を言い値で購入する。
東アジアの緊張を人為的に高めることに注力する。
これに対し、自公に対峙する勢力は外交による日本の安全保障確立を図る。
近隣諸国との平和友好関係の確立に注力する。

エネルギー政策
自公と自公補完勢力は原発を全面推進する。
自公に対峙する勢力は原発の廃止を基本方針とする。

経済政策
自公と自公補完勢力は市場原理主義を基軸に置き、消費税増税で財源を賄う方針を示す。
自公に対峙する勢力は国家がすべての国民に保障する最低水準の引き上げに注力する。
税制では消費税を抑制し、富裕層と大資本に適正な負担を求める。

問題は、立憲民主党の立ち位置がぐらついてきたこと。
2017年に立憲民主党が創設され、躍進を遂げたのは、立憲民主党が自公に対峙する政治勢力であると認識されたため。
共産党の選挙協力で立憲民主党は躍進した。しかし、2021年の衆院総選挙で枝野幸男氏が共産、れいわ、社民との共闘を否定。立憲民主党が急激な右旋回を演じた。
これを契機に立憲民主党は凋落。

枝野氏の後継代表に就任した泉健太氏が野党共闘を否定するスタンスを強化したため、2022年参院選で立憲民主党は衆院総選挙をはるかに上回る大惨敗を演じた。
立憲民主党は党消滅危機に直面していた。

その立憲民主党が方針を転換して再浮上する可能性がある。試金石となるのが4月28日の衆院3補選。この3補選で立憲民主党は共産党との共闘に転じた。
共産との共闘で3補選に全勝する場合には、立憲民主党の基本路線転換が明示されることになる。立憲民主党が右旋回から再び、自公と対峙する路線に回帰する。

早晩、衆院総選挙が実施される。この選挙で共産、れいわ、社民との野党共闘路線を再構築するなら、政権交代の可能性も生まれる
これまでの立憲民主党は「こうもり」の存在だった。
維新・国民民主の自公補完勢力と連携する仕草を示す。
しかし、情勢が変化すると、今度は共産党との共闘を選択する。
このような「こうもり」対応を続けるなら、やがて、誰からも相手にされなくなる。

立憲民主党の本当の再生は「こうもり」問題克服なくしてあり得ない。
目先の衆院3補選で有権者は、自公を選択するのか、自公補完勢力を選択するのか、自公対峙勢力を選択するのかを判断して投票に臨む必要がある。
現在の政治権力勢力は「金まみれの腐敗勢力」。
これを是とするのか否とするのか。まずは、この判断が重要。
その上で自公補完勢力を選択するのか、それとも自公対峙勢力を選択するのかを考える。
この判断の上で衆院3補選に臨む必要がある。

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24- ウクライナ情況報告:イデオロギー的敗北 - 更なる汚職の兆候

 「マスコミに載らない海外記事」に掲題の記事が載りました。
 ソチ(ロシア)冬季オリンピック終了(2014年2月23日)を待ってその翌日、バイデン副大統領(当時)の下でビクトリア・ヌーランドが主導したクーデターがウクライナで起きました。
 それはどこから来たのかも不明な囚人部隊のような暴徒による残虐なもので、警官を含む多くの人たちが銃撃され、マイダン(独立)広場から近くのビルに逃げ込んだ市民はビルごと焼き殺されました。
 その後クーデター政権軍隊(「ウクライナ義勇軍」と称しています)は ロシア住民が多数を占めていたドンバス地方の制圧に向かったのですが、旧国軍の一部の兵士がドンバス側につくなどしたため内戦に発展しました。
 結局クーデター政権は制圧が果たせないまま翌年、ミンスク合意Ⅱでドンバスの「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の自治権を認めて内戦は終了しました。両共和国はロシアの保護下に入ることを望んだのですが、その時点ではプーチンは一貫して拒否し 筋を通しました。
 それにしてもクーデター政権軍隊が、一地方に限定された内戦に勝てなかったというのは理解しにくいことでしたが、今度の記事は前半でその間の事情を明らかにしてくれます。
 そして後半ではキーウ政権の腐敗の生々しい実態を明らかにしています。ゼレンスキーらの蓄財に関しては早い段階で数百億円と言われていましたが、それからもうかなり経っています。
 先に紹介した(4月15日)国際司法裁判所の判決にみるウクライナ戦争 の著者で、キーウにも調査で出掛けたことのある羽場久美子氏も、別の記事で「ゼレンスキーが『武器を、武器を!』と要求しつつ、その半分を他の紛争地域に横流しして儲けている」と指摘しています。要するにウクライナ政権は恐ろしく堕落した政権です。

 併せて櫻井ジャーナルの記事:「ウクライナでロシアに敗北したアメリカ/NATOは核兵器を持ち出してきた」を紹介します。
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ウクライナ・情況報告:発電所戦争 - イデオロギー的敗北 - 更なる汚職の兆候
                 マスコミに載らない海外記事 2024年4月21日
                     Moon of Alabama 2024年4月16日
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国メディアを通じて議会に武器と資金支援拡大を求めて働きかけている。それは彼にとって最終的に悲惨な状況を説明することが必要になる。

 4月16日火曜日、ゼレンスキー大統領はPBSニュースアワーに出演し、ウクライナの防空体制が危機的な状況にあると強調した。
 「非常に単純な例をあげよう」と彼は言った。
 「キーウ地域の電力供給が依存しているトリピリャ火力発電所に向けて11発のミサイルが発射された。最初の7本はなんとか迎撃できましたが、残りの4本がトリピリヤに命中しました。なぜ?ミサイルが残っていなかったからだ。トリピリヤを防衛していたミサイルはすべて使い果たした」と大統領は付け加えた。
...
 重要インフラへの攻撃への対応として、ゼレンスキー大統領はこの例を用いて、ウクライナの同盟国に対し、キーウが必要とする武器、特に防空発射装置とミサイルを緊急に供給するよう改めて呼びかけた。
 率直に言って、我々は敵よりも遙かに強くなければならないので、この支援がなければ勝利の可能性はほとんどない。現在の砲弾の比率は1対10だ。これ以上耐えられるだろでうか? いや」とゼレンスキーは語った

 ウクライナが置かれている状況に、ゼレンスキーがようやく気づき始めたのは良いことだ。

 電力インフラは確かに重要な点だ。ロシアはウクライナの発電所の破壊を利用して、無条件降伏を迫っているとジョン・ヘルマーは「Naked Capitalism」で示唆している
 ヘルマーはカサド大佐のブログを引用している

 カサド大佐の軍事ブログで参謀本部の考え方を広く代表しているボリス・ロジンは、4月11日に示された作戦上の突破口を報告し、現在の標的の地図が次の攻撃と、その後の攻撃を予見するものだと説明している。ロジンは自身の分析を国営メディアRTで公開した。

 「4月11日夕方までに、ウクライナ情報筋は、トリポルスカヤ火力発電所を攻撃するため、空中発射X-69ミサイルが使用される可能性があると報告した。これまでのところ、この情報の確証はないが、これらミサイルをより詳細に研究する価値はある。射程は、航空宇宙軍戦略航空機のX-101ミサイル[Tu-95]の射程[約250~500キロに相当]のほぼ20分の1だ。彼らの[X-69]機能上、彼らはクリミア橋攻撃を試みている外国の[英仏]ストームシャドウ/スカルプ・ミサイルに近づいている。ミサイル発射がブリャンスク地域の領土から実行された場合、[X-69]の300kmという長距離は十分な可能性がある。将来ミサイルの使用が確認されれば、ドニエプル川沿いのウクライナのエネルギー施設は安全に稼働できなくなり、航空宇宙軍の攻撃能力は倍増することになる。」
  https://t.me/rt_russian/197065 

 ゼレンスキーが抱えている解決不可能な問題は電力供給不足だけではない。
 前線の状況は悪化している。現在、バフムットから約10キロ西にある重要地区の一つチャシフ・ヤルで、最近ロシア軍は重要な進歩を遂げることに成功した。
  (説明用地図 省略
 第67独立機械化旅団の一部が保持していた土地はすぐに放棄された。
 ウクライナ司令部が調査し「民族主義者」旅団のイデオロギー的枠組みに根本原因があることを発見した。

 2024年初頭から激しい戦闘が続いているドネツク州のチャシフ・ヤル戦線で一部の陣地を失った後、右派ウクライナ義勇軍の第67独立機械化旅団が捜査されており、旅団中枢を担っていた軍関係者も捜査されている。主力は他の部隊に異動中だ。
...
 監査によって明らかになった要因の一つは、旅団内の問題だった。報道によると、指導部は最近の補充の際に右派セクターの兵士と他の部門から転属してきた兵士を分離した(ウクライナ軍の軍服の模様にちなんで「ピクセル」と呼ばれた)。「ピクセル」に対する態度はさらに悪かった。彼らは初めて戦闘に送り込まれ経験不足により領土を失った。
 ウクラインスカ・プラウダ紙の情報筋によると、監査で明らかになった旅団の戦闘能力不足の理由はこれだけではなかったという。
 2014年から2018年のウクライナ東部での対テロ作戦と本格的侵攻の最初の年に部隊に所属していた元ウクライナ義勇軍戦闘員によると、現在の問題は元義勇軍を軍隊の正規旅団組織的に改革できていないことに起因しているという
 ウクライナ義勇軍が第67旅団に再編成された後、志願兵は新たに編成された軍司令部が定めた「軍事教義に従って」生活するよう強いられた。元ウクライナ義勇軍指導者らの高官には必要な軍事経験がなかった

 いわゆるマイダン革命で主要な役割を演じたファシスト右派セクターの街のチンピラやフーリガンは本物の兵士になるのに熱心ではなかった。軍は動員で最も経験の浅い兵士を前線に配置し、イデオロギー的同胞は後方に置いた
 そのような行動は、極右「国家主義者」部隊との親和性がよく知られている元総司令官ザルジニ大将下では問題なく行われていた。しかし新最高司令官シルスキー将軍が必要としているのは、アマチュアのテロリストではなく本物の兵士のだ。

 元最高司令官ヴァレリー・ザルジニ在任中、ウクライナ義勇軍の中心人物、特にアンドリー・ステンピツキーは参謀本部から支援を受けながら旅団内で、ある程度の自主性を維持できた。
引用 :「そしてシルシキーが任命された時、彼らは自らの公式的立場にふさわしい活動のみをしなければならない事実に直面した。彼らはそれを政治的迫害とみなした。高度にイデオロギー的なウクライナ義勇軍戦闘員にとって、これは終わりのようだ」運動の一部ですが、実際には戦闘豚を標準レベルに引き上げるシステムだ。」

Stranaが多少歴史を追加している。(機械翻訳)

 「ウクライナ義勇軍」(DUK)が2014年に対テロ作戦中「右派セクター」によって結成されたことを想起ねがいたい。その後、長い間、彼はウクライナのどの公的法執行機関にも所属しておらず、法的地位の曖昧さについて疑問が生じた。これは2018年まで続き、その後DUKのほとんどがウクライナ軍に加わった。

 ウクライナの他のファシスト集団、つまりアゾフと同様に、DUKや「右派セクター」は戦争中に増殖した。より多くの部隊に侵入した
 2023年、ウクライナ義勇軍は二つの部分に分割され、一方は特殊作戦軍に加わり、もう一方は第67独立機械化旅団を編成した。2024年2月、ダヴィンチ・ウルブズ部隊の一部が第67旅団から第59独立自動車歩兵旅団に編入された。
 「国家主義者」旅団の「改革」は、シルスキ指揮下の新司令部にとって、かなり難題だろう。彼はロシア生まれなので、最終的に彼らは彼を究極の敵と宣言するかもしれない。
 ゼレンスキーが対処すべきながら、そうしたがらない、もう一つの問題は、戦争により増大するばかり汚職の兆候だ。

 法律により、国会議員、検察官、裁判官などのウクライナの役人は、国家汚職防止庁(NACP)に資産を申告しなければならない。
 経済プラウダ紙報道によると、NACPは2023年の提出期限である3月31日までに約66万4,000件の文書を受け取ったという。
 水曜日、同ニュースサイトは2,200人の当局者を対象に、2022年から2023年にかけて運命がどのように変化したかを調査するための申告を無作為に選択したと報じた。
 その結果、当局者の6人に1人がアパートか家を購入し、3人に1人が車を購入したことが判明した。彼らは車721台、アパート268戸、新築住宅90戸を購入した
 一方、新たな資産購入にもかかわらず、当局者の貯蓄は増加した。
 経済プラウダ紙は、ロシアによるウクライナ全面侵攻の二年間で、宣言者の現金と銀行預金が約4分の1増加したことを明らかにした。

 ウクライナの悲惨な経済状況はこれに対して、汚職以外に説明の余地がない(機械翻訳)。

 昨年、ウクライナで記録的台数の高級外車が販売された。平時とは思えないベストセラー車トップ10には、プレミアムブランドも含まれていた。そして、ウクライナにおけるテスラの台数は、2021年と比較してほぼ10倍に増加した。
 戦争が続く国でこのような高級車需要のブームは、一見すると少なくとも奇妙に見える。しかし、これには理由がある

 ウクライナで、中古テスラが少し安くなった。しかし、ウクライナで高級車販売が急増している主な理由は次のとおりだ。

 第三に(これが重要なことだが)、高級車の新規購入者のカテゴリーがある。これは、戦争が始まって以来、暮らしが大幅に向上した人々だ。
 「戦前、ある男は質素なフォルクスワーゲンに乗っていた。そして彼は流れに腰を下ろし、お金を手に入れ、車をアップグレードすることに決め、レンジローバーを購入した。そして、そういう例は多々ある」と、ある自動車ディーラーは語った。キーウは私たちに語った。
 ディーラーの従業員によると、車を「よりまともな」ものに大規模に買い換えているのは、特に治安部隊だという。
 更に、戦争中に非常に裕福になった人々の層全体がこの国に現れた。軍への供給のための汚職計画も含まれる。彼らは高級車購入者の主要なカテゴリーでもある。そう、他にも高価なものもある。たとえば、高級時計ディーラーの一人は、昨年の売上高がこのビジネス全体の記録を超えているとストラナに語った


 ゼレンスキー大統領が議会に懇願する中、「時流に乗って」利益を得ている連中の費用を誰かが支払わなければならないことを議会は考慮すべきだ。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/04/ukraine-sitrep-the-power-plant-war-ideological-losses-more-signs-of-corruption.html#more 


ウクライナでロシアに敗北したアメリカ/NATOは核兵器を持ち出してきた
                         櫻井ジャーナル 2024.04.24
 ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は4月22日、ポーランドの日刊紙に対し、アメリカの核兵器をポーランドへ持ち込む問題について話し合ってきたと認め、受け入れる用意はできていると語ったが、ドナルド・トゥスク首相はこの件についてドゥダと早急に話し合う必要があると述べている。それに対し、ロシア政府はポーランドへアメリカ軍の核兵器が配備された場合、必要な措置を講じると述べた。
 アメリカ/NATOの内部には、自分たちの代理人としてロシアと戦ってきたウクライナが敗北したことに危機感を抱き、パニックになっている人たちがいる。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はNATOの地上軍をウクライナへ派遣すると口にし、フランス軍部隊約1000名がオデッサへ入ったと伝えられている。さらに同程度の部隊が送り込まれる予定だともいう。

 2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒された直後から西側の傭兵がウクライナへ入ったと言われているが、フランスからも「傭兵」という形で戦闘員が派遣されている。
 ロシア軍は今年1月16日にウクライナのハリコフを攻撃し、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊した。この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたと伝えられている。

 ドイツ軍もロシアとの戦争に積極的で、3月1日に公開された音声によると、ドイツ空軍のインゴ・ゲルハルツ総監、作戦担当参謀次長のフランク・グレーフェ准将、そして連邦軍宇宙本部のフェンスケとフロシュテッテ幹部が2月19日にリモート会議で「タウルスKEPD 350」ミサイルによるクリミア橋(ケルチ橋)攻撃について話し合っている。ゲルハルツらは昨年10月の時点で計画の内容を太平洋空軍司令官だったケネス・ウイルスバックに伝えているという。
 4月23日には「ステッドファスト・ディフェンダー 24」の一環として「グランド・クアドリガ2024」がリトアニアで始まった。その軍事演習へドイツ軍は3000人以上を派遣している。

 しかし、アメリカ/NATOはウクライナでの敗北が決定的。4月23日にロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は2022年以来、ウクライナ軍は約50万人の兵士を失ったと述べているが、これは常識的な見方。兵士や兵器の補充がままならない状況になっている。そこでテロ攻撃を始めたが、限界がある。残された手段は核戦争だ。
 アメリカ政府は停戦を実現するため、核兵器を脅しに使ったことがある。ハリー・トルーマン政権が中国で成立した共産党政権を倒すために始めた朝鮮戦争が思惑通りに進まず、1953年1月に新大統領となったドワイト・アイゼンハワーは早期停戦を目指した。そこで、新大統領は中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)
 アイゼンハワー政権で副大統領だったリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法、つまり核兵器で恫喝した。(前掲書)
 しかし、ロシア相手にこの手段は通じないだろう。