2015年1月8日木曜日

「緊急事態条項は危険」と若手弁護士会

 7日の「明日の自由を守る若手弁護士の会」ブログが、「最初に憲法改正をするテーマは何?」のなかで緊急事態条項」を取り上げ、ナチスの全権委任法に当たるものだとしてその危険性を述べています。 
 
 この条項は自民党改憲案の初期の時点から登場していましたが、東日本大震災を経験すると、そういうときのために必要な条項だと強調する様になりました。
 しかし東日本大震災で政府が右往左往したのは何もこの緊急事態条項がなかったためなどではなく、ひとえに民主党政権の無能に拠るものでした。その無為無策ぶりは自民党政権に代わってもまったくそのままなのですが、それは一体どういう権限が不足しているからだというのでしょうか。
 今でも日々痛感させられる福島原発事故における政府の無策ぶりは、決してそんな外因に拠るものではなくて、ひとえに政権の無能・冷酷・不誠実によるものです。
 
 本ブログでも「緊急事態条項(=非常時大権)」とナチスとの関係については何度か取り上げてきましたが、極めて重大な問題なのであらためて「若手弁護士の会」のブログを紹介します。
 
    2015年1月4日 安倍政権が改憲に本腰 危険な「緊急事態権」導入 
    2013年8月3日 ワイマール憲法下でなぜナチス独裁が実現したのか
 
 それにしても、日本のマスメディアがこの問題でも死んだようになっていて、一切問題視しないのはどういうわけなのでしょうか。
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最初に憲法改正をするテーマは何? 
明日の自由を守る若手弁護士の会  2015年1月7日
 実は、国会では既に、1回目に憲法改正の手続をするテーマを何にするか、という議論が始まっている。
…って、知ってました?
 衆議院と参議院には「憲法審査会」というものがあり、憲法改正についてさまざまな研究と議論を行っています。
テーマの絞り込みは、昨年11月6日の衆議院憲法審査会で、議論がなされました。
 
 1回目に行う改正手続のテーマとして、11月6日に自民党議員から提案がなされたテーマは6つあります。
①環境権
②緊急事態条項
③財政規律
④憲法改正手続(96条)
⑤裁判官の報酬引き下げ(80条2項)
⑥公金の支出(89条)
ううむ、9条って入ってないんですね、
①環境権はよく言われるし④96条も2013年に大問題になったけれど、
そのほかは初めて聞いたけど何が何やら?と思われるかもしれません。
 
 例えば、②緊急事態条項
 おおざっぱに言えば、災害や戦争などの緊急事態のときには、国会と同じ権限を内閣に与える、というものです。今の憲法にはありません。
 東日本大震災以降、急に言われ始めたもので、マスコミでもなんとなく必要なんじゃないかなぁ~という論調が多くみられます。
 11月6日の憲法審査会でも、9条のことを言う議員が多かったこともあって、緊急事態条項に対する異論は出されませんでした。
 
 でも、ちょっと待ってくださいね。
 ドイツでナチスが権力を独裁的に掌握していった大きな要因は、全権委任法にあると言われています。
(全権委任法は、緊急事態条項と同じように、内閣に立法権を与えるという法律でした)
 気をつけないと、ナチスと同じようなことになってしまう危険性をはらむ条項ですから、
安易に入れよう入れようということにはできないはずです。
 
 自民党改憲草案に書かれている緊急事態条項について解説した記事がありますので、興味があればぜひお読みください^^
 
 こんな問題のあるテーマなんですから、国会でもマスコミでも私たち市民の間でも、十分話し合っていく必要がありますよね。
 自民党は、2016年に憲法改正手続を行うことを目指すと言われています。
 もう、来年です。 
 
 
緊急事態条項?
明日の自由を守る若手弁護士の会 2013年4月22日
今日は、緊急事態条項のお話です。
 東日本大震災以降、憲法に緊急事態条項を作るべきだという話が急に出てきました。これはいったいどういうものなのでしょうか?
 
 自民党改憲草案98条と99条は、緊急事態条項を定めています。これは、ものすごくてっとり早く言うと、地震や戦争などで内閣が「緊急事態」と判断したときには、
 三権分立をやめて、内閣が法律と同じ効力のある政令を作れるようにする(国会の権限の重要部分を内閣にも与える)、
というものです。
では、緊急事態宣言がなされたらどうなるか。
 
 緊急事態宣言がなされた場合には、「何人も」、国の指示に従わなければならないとしています(草案99条3項)。つまり国民も、企業も、地方自治体も、国などの指示に従う義務を負うことになります。
 
... 自民党は、緊急事態条項の説明として、「国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、その範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもありうる」としています(Q&A33頁)。ここで「大きな人権」に入っていないものの代表例は、政治的言論をはじめとする表現の自由ですね。
 そうすると、内閣が緊急事態宣言をした場合、「国民の生命や身体の安全を守るため」という「名目」で、内閣に不都合な言論を禁止してしまうということが容易にありえる、ということになります。報道規制や、デモや集会の禁止、ということがすぐに思いつきますね。
 緊急事態には国などの指示に従わなければならないわけですから、内閣に不都合な言論を禁止した場合、それに従わずに言論を続けたら処罰される、ということも想定されます。
 
 こういったことが、内閣の独断でできるようになってしまうわけです。
 以前にも書きましたが、立憲主義の考え方は、「権力は、放っておくと、圧政・独裁・暴走するようになる」という考えから、国民の権利と自由を守るためには権力を放っておいてはいけない、権力を縛らなければならない、というものです。
このことから、権力は1つのところにまとめておいてはいけない、立法、行政、司法に分けて相互に監視、抑制させなければならない、とされているのです。
みなさんが学校で習った三権分立も、立憲主義から生まれた考え方なのです。
 
 なのに、内閣が好き勝手にできるようになっていいのでしょうか?
 そもそも、東日本大震災のときに緊急事態条項があったら、今より良くなっていたのでしょうか?