2014年7月19日土曜日

原爆の惨状克明に描いた映画「ひろしま」が再上映

 1953(昭和28年)に封切られた映画「ひろしま」(原作:原爆体験文集『原爆の子』)は、原爆投下後の広島の惨状を克明に描いたもので、山田五十鈴、月丘夢路らの女優・俳優陣に加え、被爆者を含む約九万人の広島市民らがエキストラとして出演し、被爆現場のむごい光景を生々しく再現しました。
 そしてベルリン国際映画祭長編映画賞に輝くなど、作品は海外でも高く評価されました。
 
 しかしアメリカの新聞が、「アメリカは戦後あれだけ援助したのに日本はいまだに原爆投下を恨んでいる」などと、全く見当外れの非難記事を載せるなどしたために、結局大手映画会社が上映を取りやめて「幻の映画」となりました。
 
 1953年といえばサンフランシスコ講和条約発効の翌年であり、まだ占領下に近い状態でもあったので、これはある程度やむを得ないことでもありました。しかしその後実に60年間、なんと一貫して日本はアメリカに従属したままで、またアメリカは原爆投下を反省する言葉をただの一度も口にすることはないままで推移し、現在に至っています。
 
 映画は、福島原発の事故以後核問題へ関心が高まったこともあり、これまで国内外約60カ所で上映されました。
 今月19日~日に宇都宮ヒカリ座で、8月日~29日に小山シネマロブレで、それぞれ上映されます
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原爆の惨状克明に 映画「ひろしま」 あすから宇都宮 来月、小山でも上映
東京新聞 2014年7月18日
 原爆投下後の広島の惨状を描いた映画「ひろしま」(関川秀雄監督)が十九日から来月にかけて栃木県の宇都宮、小山両市で上映される。一九五三年の封切り後間もなく、大手映画会社の上映が取りやめられた「幻の映画」。仕掛け人の映画プロデューサー、小林一平(いっぺい)さん(67)は「原爆の残虐性、戦争の愚かさを伝えている」と観賞を呼び掛ける。
 
 映画は、広島の子どもたちの原爆体験文集『原爆の子』が原作。四五年八月六日の原爆投下で家族を失ったり、被爆に苦しんだりしながらも、たくましく生きる人々の姿を描く。モノクロ作品で一時間四十四分。
 山田五十鈴、月丘夢路ら俳優陣に加え、被爆者を含む約九万人の広島市民らがエキストラとして出演。市民たちは茶わんや衣類など被爆した生活用品も撮影用に提供した。作品では、被爆現場のむごい光景が生々しく再現されている。
 
 後に社会派映画監督となった熊井啓さんの初助監督作で、映画「ゴジラ」の音楽を担当した伊福部昭(いふくべあきら)さんが、この映画の音楽を担当した。ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝くなど評価は高かったが、大手映画会社で配給されず、当時あまり上映されなかった。
 再上映を働き掛けてきた小林さんは、映画で監督補佐を務めた小林大平(たいへい)さんの長男。二〇一一年の東京電力福島第一原発事故後、核問題へ関心が高まったこともあり、国内外約六十カ所で上映されている。
 小林さんは「この映画が(封切り当時)ちゃんと見られていたら、原発事故は起こらなかったはず」。安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことにも触れ「戦争がどんな立場のどんな人を苦しめるか、命の尊さを映画を通して知ってほしい」と話す。
 
 今月十九日~八月八日に宇都宮ヒカリ座(宇都宮市江野町)、同九日~二十九日に小山シネマロブレ(小山市中央町)。問い合わせは、宇都宮ヒカリ座=電028(633)4445、小山シネマロブレ=電0285(21)3222=へ。 (後藤慎一)
 
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