2013年4月12日金曜日

TPPの先行モデルはMAI

 
 TPPが進みだしているようですが、日本の大新聞・TVはなぜTPPの本質について報道しないのでしょうか。TV局がTPPのメリット、デメリットを並べようとしたらメリットが見当たらなかった」という話も伝わっていますが、とうに分かっていた筈なのになにをいまさらという気がします。
 また報道する場合、多くのマスメディアが農産品の関税に特化して行うという風潮があります。農業や酪農の保護は勿論重要なことですが、他の面を見落としていては問題の矮小化のそしりを免れません。

 8日付のブログ神州の泉」TPPにはMAIという先行モデルがあったという記事が載りました。

 TPPの原型はMAIであるとしてMAITPPの本質を明解に述べていますので、以下に要約します。

(「神州の泉ブログの要約開始)
 約一年前に出たカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の『日本を追い込む5つの罠』(角川書店)TPPには先行的なMAIという雛型があるという記述があった。
 要旨は以下のとおりである

 1995年、アメリカ主導の経済協力開発機構(OECD)がヨーロッパにおいて突然多国間投資協定MAIなる構想を打ち出し交渉を始めた。そこには各国政府は自国企業に有利な扱いをしてはならないという取り決めがあり、企業が外国政府に対し、直接、“平等な扱い”を要求し訴えることができるという条項が含まれていた。
 そうすると開発途上国家は開発政策を推進できなくなり、海外投資家によって国内の市場関係者たちはたちまち壊滅状態に追い込まれる

 MAIの主旨強力な条約を定めてアメリカなどの多国籍企業が進出先の国で最大級の特権、恩典を受けるということであるそれは多国籍企業はこれまでの国際協約の経験則から厳格な強制措置なしに自分たちの要求を通すことはできないと認識したからで、MAIは新植民地主義的なやり方に法的?な基盤を与えるものであった。

 しかしその本質が明らかになるとインターネットを通じて大衆反対運動が起こり1998年にフランスが交渉参加を取りやめことでMAI完全に頓挫した。(その後MAIはWTOのドーハ・ラウンド貿易障壁の除去を目的とする多角的貿易交渉に姿を変えて再登場したがやはり暗礁に乗り上げた

 それから12年後の2010年に突然MAIはより入念に仕上げられて「TPPという名前で表れた。やはり全ての参加国を多国籍企業が打ち出す企業ルールによる法制下に組み込む(=治外法権を受入れる)というものであった
 (要約終わり)

 以上の経過を見るとTPPの本質は一目瞭然で、それがなぜ秘密交渉下で進められるようになったのかもよく理解できます。

 マレーシアではTPPで「ジェネリック医薬品」が高騰して手に入りにくくなるのではないかという懸念から、患者たちが11日にTPPに反対するデモを行いました。
 韓国では、現実に米国から数千億円の損害賠償請求が起こされたほかに、既に「ジェネリック医薬品」が高騰しているということをNHKがTPP特集のときに一瞬でしたが流しました。
       ※ 3月4日付「韓米FTAで韓国に数千億円の損害賠償請求が」
 
 以下に、マレーシアの患者らのデモ、大学教員850名がTPP交渉からの即時撤退を要求・・・についての記者会見、19道県が行ったTPPによる農林水産業への影響の試算結果についての記事を紹介します。
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「TPPで医薬品入手困難に」患者らデモ
NHK NEWS web 2013年4月11日
マレーシアでは、TPP=環太平洋パートナーシップ協定によって、製薬会社の知的財産の保護が強化され、価格が安い「ジェネリック医薬品」が手に入りにくくなるのではないかという懸念が広がっていて、患者らがこの動きに反対するデモを行いました。
TPP交渉では、アメリカの求めで、医薬品の特許の期間を延長したり、特許の範囲を拡大したりして、製薬会社の知的財産の保護を強化することが話し合われているとされています。
これについて、交渉参加国のマレーシアでは、特許が切れたりして成分が同じでも価格が安い「ジェネリック医薬品」が、手に入りにくくなるのではないかという懸念が広がっていて、11日、首都クアラルンプールにあるアメリカ大使館の前で、患者らがこの動きに反対するデモを行いました。
参加したエイズウイルスの感染者や支援者らおよそ100人は、「アメリカは要求を取り下げろ」などと叫び、代表者が要望を書いた書類を大使館側に手渡しました。
デモを主催した団体の代表は、「貧しい人たちは、高価な薬を購入すれば生活を維持できない。TPPは、豊かな者に有利な不公平なものだ」と主張していました。
マレーシア政府は、TPPによってアメリカなど多くの国との貿易が拡大するとしていますが、こうした国内の反対意見も踏まえて交渉を進めることにしています。

TPP交渉 即時撤退を 大学教員850人が要望 国会内で有志が会見
しんぶん赤旗 2013年4月11日
 全国の大学教員850人が安倍首相にTPP(環太平洋連携協定)参加交渉即時撤退を求めている―。大学教員有志が10日、国会内で記者会見しました。

 醍醐聰東京大学名誉教授ら17人の大学教員有志が呼びかけ人になって、安倍首相に参加交渉即時撤退を求める要望書への賛同を全国の大学教員に募り、先月28日から短期間で集めたものです。会見には醍醐氏のほか、萩原伸次郎横浜国立大名誉教授、金子勝慶応大教授、鈴木宣弘東大教授らが出席。醍醐氏は「あらゆる分野の大学人が、TPP問題への政府の対応に危機感を持っている」とのべました。
 金子氏は、TPP参加交渉がアメリカの言いなりになる危険性を指摘し「国の主権を脅かすTPP参加は『売国的』ともいえる」と批判しました。

TPP 19道県が農林水産業試算 乳製品「全滅」
東京新聞 2013年4月12日
 政府が環太平洋連携協定(TPP)に参加した場合を想定し、十九の道県が地元の農林水産業への影響を独自に試算していることが本紙の調べで分かった。全道県で生産額は減少。千葉、茨城などでは牛乳・乳製品で、生計を立てられる農家がゼロになることを意味する「全滅」と判定されるなど、大きな影響が出ることが浮き彫りになった。十九道県で計一兆六千億円減る計算で、他の二十八都府県も含めれば、総額で三兆円減少するとした政府試算を上回る可能性が高い。
 政府は三月十五日、安倍晋三首相がTPP交渉参加を表明した際、農林水産業への影響試算を公表。十九道県は、これを受けて独自に試算を行った。
 政府試算と同様に、交渉参加十一カ国との関税が即時撤廃されて、米国などから安い農産品が輸入されるという前提で計算。ただ、地域の生産量や競争力をほとんど考慮していない政府試算と違い、各道県が県内の状況に合わせて独自に評価した。
 農林水産物の減少額を最も多く想定したのは北海道の四千七百六十二億円で、道の農業産出額の約47%に達する。鹿児島、宮崎、茨城、栃木、千葉、岩手を含めて計七道県が約三~四割にあたる一千億円以上減少するとした。
 政府試算は各品目がTPP参加により生産が減少する率を一つの数字に統一して計算した。例えば牛乳・乳製品は減少率45%と計算したため、消費者の人気や品質の差が与える影響が、数字からは見えなかった。
 減少率を個々に割り出した十九道県の調査では、茨城、栃木、千葉など十一県は牛乳・乳製品を「全滅」と判定。外国から安い価格の加工乳が入り、そこから乳製品をつくるようになるため、壊滅的なダメージが出ると予測されている。
 一方、政府が70%減とする豚肉は、生産額日本一の鹿児島が減少率を45%としたのに対し、滋賀や高知は「全滅」と試算した。