2013年1月8日火曜日

日本国憲法はいまなお世界で最先端

    先日亡くなった米国人女性ベアテ・ゴードンさんは「日本国憲法9条は戦争が生んだ真珠」と“戦争放棄”を称えました。 

終戦の年の年末から翌2月頃に掛けて日本の民間団体は様々の新憲法草案を発表し、中でも鈴木安蔵氏らの「「憲法研究会」が作成した「憲法草案要綱」は、非常に先進的なものでありGHQから注目されました。
その一方、肝心の政府が組織した「憲法問題調査委員会1」の草案は、「大日本帝国憲法」の域を殆ど出ないものだったのでGHQを大いに失望させました。そこで必要に迫られたGHQは急遽組織内に作成チームを作って、僅か1週間程度で日本国憲法草案を完成させました。    1・法務省役人と帝大教授たちで構成
73日付【憲法制定のころ 1】 憲法はアメリカに押し付けられたものか??2 参照
当時22歳のベアテさんも作成チームに参加3して「人権」(特に「女性の権利」)の部分を担当しました。そして後年、参院憲法調査会に参考人として招かれたとき、彼女は「普通、人が他の人に何か押しつけるときに、自分のものより良いものを押しつけはしません。日本の憲法はアメリカの憲法よりすばらしい憲法ですから、この憲法が日本の国民に押しつけられたというのは正しくありません」と述べました。
     3・女性では唯一人 

 ところでアメリカの二人の学者が全世界188カ国の全成文憲法を比較分析した結果、日本の憲法は今も世界の最先端であることが証明されました。
例えば女性の権利をうたった憲法は1946年は世界の35%だけ(現在では91%)で、移動の自由は制定当時50%(現在は88%)、また生活権は制定当時33%(現在は78%)だけという具合で、日本国憲法は世界の人権項目の上位19位まですべて満たす先進ぶりでした

 詳細は下表のとおりです。
これを見ると比較対象の米国憲法などは問題にもならず、ベアテさんの言う通りであったことが良く分かります。
実際彼女は、草案を作成するに当り、アメリカ合衆国憲法の他、ワイマール憲法、フィンランド憲法、ソビエト社会主義共和国連邦憲法などからも選りすぐりのエッセンスを取り入れて、世界最高の憲法を制定したと語っています。


  世界の憲法にうたわれている権利ランキング

順位

権利の種類

日本

米国

1946

1976

2006


信教の自由



81

88

97


報道・表現の自由



87

86

97


平等の保障



71

88

97


私有財産権



81

83

97


プライバシー権



83

81

95


不当逮捕・拘束の禁止



76

79

94


集会の権利



73

75

94


団結権


×

72

77

93


女性の権利


×

35

70

91

10

移動の自由


×

50

58

88

11

裁判を受ける権利



68

62

86

12

拷問の禁止



37

45

84

13

投票権



63

69

84

14

労働権


×

55

67

82

15

教育の権利


×

65

65

82

16

違憲立法審査権


×

25

51

82

17

遡及処罰の禁止



41

60

80

18

身体的権利


×

44

57

79

19

生活権



33

41

78

20

推定無罪

×

×

8

37

74

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

60

武装する権利

×


10

4

2

上表は、朝日新聞201253日付「日本国憲法 今も最先端 米法学者ら 188カ国を分析」記事中にあるものです。 

同記事は、188カ国の憲法を分析した学者の一人 ロー氏は、日本で、米国の「押しつけ」憲法を捨てて自主憲法をつくるべきだという議論があることについて、「日本の憲法が変わらずにきた最大の理由は国民の自主的な支持が強固だったからの筈で、日本人の賢明さ」。改憲という主張は「奇妙なことだ」と語っていると結んでいます。 

 以下に同記事を紹介します。
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日本国憲法 今も最先端 米法学者ら 188カ国を分析
最古の米国時代遅れに
朝日新聞 201253

世界に民主化を説く米国の憲法は、急速に時代遅れになって、日本の憲法は今でも先進モデル― 。米国の法学者たちが世界の国々の憲法をデータ化して分析した結果だ。日本の憲法は3日、「65歳」になるが、世界の最新版と比べても遜色がない。
分析したのは、ワシントン大学(米ミズーリ州)のビッド・ロー教授と、バージニア大学のミラ・バースティスーグ准教授。対象は成文化された世界のすべての憲法188力国分。
第2次大戦後の1946年から2006年まで、各国憲法の改正や独立国の新憲法をチェックし、国民の権利とその保障の仕祖みを項目ごとにデータ化。国際的な変化が年代別に分かるようにした=表(前掲の表)。 

    それを見れば、時代とともに新しい人権の概念が生まれ、明文化された流れが読める。たとえば、女性の権利をうたった憲法は1946年は世界の35%だけだったのが06年は91%に、移動の自由も50%から88%に達した。最近では、お年寄りの権利も上昇中だ。

国別に見ると、国際情勢の断面が浮かぶ。独立後間もない18世紀に定めた世界最古の成文憲法を抱える米国は、長らく民主憲法の代表モデルとされてきた。だが、この研究の結果、特に1980年代以降、世界の流れから取り残される「孤立」傾向が確認された。
女性の権利や移動の自由のほか、教育や労働組合の権利など、今では世界の7割以上が盛る基本的な権利がいまだに明文化されていない。一方で、武装する権利という世界の2%しかない「絶滅」寸前の条文を大切に守り続けている。 

米連邦最高裁判所のギンズバーグ判事は、民衆革命を昨年春に遂げたエジプトを訪ねた際、地元テレビでこう語った。「今から憲法を創設する時、私なら米国の憲法は参考にしない」。憲法の番人である最高裁判事自らが時代遅れを認めた発言として注目された。
米国に代わって最先端の規範として頻繁に引用されるのは、82年に権利章典を定めたカナダや、ドイツ、南アフリカ、インド。政治や人権の変化に伴い改廃を加えてきた国々だ。憲法の世界でも、米国の一極支配から、多極化へ移っている現実がうかがえる。 

画期的内容の日本の憲法 問題は政治
一方、日本。すぐに思い浮かぶ特徴は戦力の不保持と戦争の放棄をうたった9条だが、シカゴ大学のトム・ギンズバーグ教授によると、一部でも似た条文をもった国は、ドイツのほか、コスタリカ、クウェート、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ハンガリーなどけっこう例がある。 

世界から見ると、日本の最大の特徴は、改正されず手つかずで生き続けた長さだ。同敦授によると、現存する憲法の中では「最高齢」だ。歴史的に見ても、1920世紀前半のイタリアとウルグアイに次いで史上3番目だという。
だからといって内容が古びているわけではない。むしろ逆で、世界でいま主流になった人権の上位19項目までをすべて満たす先進ぶり。人気項目を網羅的に備えた標準モデルとしては、カナダさえも上回る。バースティーグ氏は「65年も前に画期的な人権の先取りをした、とてもユニークな憲法といえる」と話す。 

ただ、憲法がその内容を現実の政治にどれほど反映しているかは別の問題だ。同氏らの分析では、皮肉なことに、独裁で知られるアフリカなどの一部の国々も、国際人権規約などと同様の文言を盛り込んでいるケースが増えている。
「同じ条文であっても、どう実践するかは国ごとに違う。世界の憲法は時代とともに均一化の方向に動いているが、人権と民主化のばらつきは今も大きい」。確かに日本でも、女性の権利は65年前から保障されてはいても、実際の社会進出はほかの先進国と比べて鈍い。逆に9条をめぐっては、いわゆる「解釈改憲」を重ねることで、自衛隊の創設拡大や海外派遣などの政策を積み上げてきた。 

 日本では、米国の「押しつけ」憲法を捨てて、自主憲法をつくるべきだという議論もある。それについてロー氏は「奇妙なことだ」と語る。「日本の憲法が変わらずにきた最大の理由は、国民の自主的な支持が強固だったから。経済発展と平和の維持に貢献してきた成功モデル。それをあえて変更する政争の道を選ばなかったのは、日本人の賢明さではないでしょうか」  ワシントン 立野純二